大人の肌にしたい、夏のスキンケア【38歳以降対象】

夏が本格化してきましたね。

私の住まう札幌はここ数年に比べると北海道らしい夏です。今のところは。

ただ体感的な湿度は昔に比べるとやはり高く、気温が低くても蒸し蒸ししているのは否めません。この程度で文句を言ってはいろんな方面から怒られそうですけれどね。

さて。

サロンで拝見していると、お客様のお肌にも夏の特徴が目立つようになってきました。

今日は大人の肌に向けた夏のスキンケアポイントをまとめたいと思います。

確実な紫外線対策をする

美容に関心のある方にとっては常識といって良いくらいの基礎的ケアですが、正しく効果的な紫外線対策となると案外難しいもの。あらためて大切なポイントをまとめます

紫外線防止効果のある下地か日焼け止めを必ず毎日使う

日傘や帽子だけでは不十分です。特に建物が多い都市部では紫外線は上から下に降り注ぐ直射光よりも周囲に反射して四方八方に注ぐ散乱光の方が量が多いのです。

近ごろ明らかになってきたのですが、しみだけでなく、しわやたるみの主犯も加齢でなく紫外線だと言われはじめています。少なくともお顔には必ず紫外線防止効果のある下地か日焼け止めを塗りましょう。

また、紫外線B波は窓ガラスを通ることができませんが、A波は余裕で透過します。しみ、しわ、たるみは主犯がA波です。美容の観点からは室内にいるときもお顔だけには塗った方が無難です。

参考記事:
化粧下地の選び方、考え方

お顔に対し、大きめのパール粒2粒分、または1円玉大が正しい使用量

表記のSPF値は、1平方センチメートルあたり0.4mgという量でテストされた紫外線B波の防止効果です。数値にされちゃうとどのくらいの量なのかイメージつきにくいと思うのですが、

びっくりするぐらいの厚塗りです

つまり、そのくらい塗らないと、塗ったところで製品が想定している紫外線防止効果は得られません。

質感(テクスチャー)が重めの日焼け止めならパール粒2粒分、さらっとした軽めのものなら1円玉大使いましょう。

逆説的になりますが、そのくらい厚塗りできない質感のもの……つまり、液状に近いようなジェルや、物理的に厚塗りが不可能なパウダーは表記の性能は引き出せないと考えてもらって良いです。

確実な紫外線対策のためにはクリーム状の、やや質感が重めな日焼け止めを選んでください。

ノンケミカルの方が肌に負担が少なく、紫外線をカットする仕組み上、薄塗になってしまっても焼けにくいです。

化粧水だけのスキンケアはしない

暑くなってくると美容液やクリームのベタツキが不快だったり、何回も化粧品を付けるのが面倒だったりします。

シャワーのあとパッと化粧水だけつけてそれっきり……なんてこともよくありますよね。私もです。

30代半ばくらいまでなら肌の基礎力がそこまで衰えてないので、ひと夏くらいそんなことがあっても良いかもしれません。

30代後半からはそろそろ賢く手抜きしましょう。

何か一つしか付けられないのなら、クリームまたは美容液にしましょう。

優秀な美容成分は油に溶ける性質のもの(油溶性)が多く、クリームに濃度が高く含まれる傾向があります。これは、化粧水や美容液のベースとなる材料が「水」なのに対して、クリームは水+油性原料がベースになるので、油溶性の成分が混ぜやすいためです。

特に化粧水は95%以上が基材の水であるケースが大半で、クレンジングや洗顔後の肌を整えて次の美容液やクリームを塗りやすくする目的で使います。

中には基材が水ではなく保湿成分という珍しい化粧水がありますが、2024年現在でもまだかなり稀です。

シャワーの後にパシャっと化粧水をつけるのは気持ちが良いものですが、大人の肌には気持ち良さだけでなく投資も必要です。どうしても面倒なときや手をかけられないときは、クリームをまず選択肢に考えましょう。

美容液は基材が水のことが多いですが、化粧水に比べると美容成分の濃度を高く含んでいる傾向があります。ただ美容液はクリームに比べてもそのつくりは多彩で製品によります。

逆に乳液はほとんどが基材(水と油性原料)とエモリエント成分で、美容成分は含みません。市販の乳液はそのエモリエント成分を美容成分として扱い、「90%以上美容成分」などと謳っていたリします。エモリエント成分……表面を柔らかく、滑らかな手触りにする成分を美容成分とするかどうかは、考え方が分かれるところだとは思いますが、少なくともエステ領域では美容成分ではありません。それを裏付けるように、乳液というカテゴリーの化粧品は業務用製品にはほとんどありません。テクスチャーの緩めなクリームはありますけれど、乳液とはけっこう組成が違っていて、やはり「クリーム」です。

べたつきや質感の重さがどうにも受け入れがたいのなら、夏場だけクリームの種類を変えるのもアリです。皮脂や汗が主となる皮脂膜はお肌のうるおいを守るのにたった2,3%しか担っていません。油分を足すことが重要なのではありません。

各種セラミドや、セラミド類似成分、低分子コラーゲン、アセチル化したヒアルロン酸などの水を抱え込んで逃さないタイプの保湿剤がたっぷり入ったものであれば、油分は抑えても大丈夫な人が多いです。油性のべたつきが気になるのなら、クリームの変更も考えてみてください。

ちなみに、ヒアルロン酸は濃度が高いものは独特のぺたつきがありますし、コラーゲンも種類と濃度によってはべたつきます。油性のべたつきは違いますが、そのあたりは肌への投資と思い、目をつむっていただくのも賢いやりすごし方です。

性能、価格、使用感すべてにおいてパーフェクトなものはなかなかないので、30代後半くらいからは性能に重きを置いてスキンケア化粧品を選んでおくと、10年後くらいからその判断を心から喜べるようになると思います。

こすらない、マッサージしない

暑くなってくると角栓が気になったり、むくみや血圧の低下などでくすんで顔色が悪く見えやすくなるのでついクレンジングの時にマッサージをしたり、クリームや乳液をぬるときにマッサージをしたくなったりすることもあると思います。

大人の肌にマッサージはご法度です

こすると肌表面が茶色く変色(色素沈着)しますし、それ以上に深刻なのはたるみやしわを誘発します。

たるみやしわはどの部位であろうと、根本的には肌の一番下の部分──真皮組織の劣化です。これは加齢や紫外線ダメージで弱るだけでなく、マッサージなどの物理刺激でも傷みます。

マッサージ自体はむくみの解消や血行促進に有効ですが、同時にそういったリスクがあります。

2024年現在でも真皮組織の劣化へのアプローチはとても難しく、どうしても、となると最終的には形成外科での施術しか方法がありません。なので、何よりも予防が重要な領域です。

たるみやしわの悩みが本格化してくるのは、だいたい50代半ば頃から。

30代後半ごろからはそこを見据えた予防的ケアをはじめて欲しいところです。

たるみやしわが強く出てくるとお顔の印象が大きく変わるので、ご自身でも「老けたなぁ」とはっきり感じやすいですし、家族やお友達、仕事関係の人に「昔はきれいだったのにね」と言われかねません。これは、なんというか……最終的にはメンタルヘルスに関わる問題です。

若々しい印象を保つ方が自分的にも社会的にもいいことが多いものです。

ぜひそのためのひとつとして、今からすぐにマッサージはやめてください。

むくみや筋肉のアプローチをどうしても行いたいときは、肌へダメージを抑えることができる専用の化粧品や美容機器を活用します。

まとめ

大人の肌の夏のスキンケアポイントは以下のとおり。

  • 確実な紫外線対策
  • 化粧水だけのスキンケアは止める
  • こすらない、マッサージしない

冬場とは違った点で肌には過酷な季節ですが、しっかりスキンケアしながら季節を楽しんでいただければと思います。

しわやたるみが深刻になってからでは、本当にできることが少ないので、予防的投資が大切です。

たるみは化粧品で改善できるの?

だいたい45歳前後になると、乾燥に加えてしみ、しわ、たるみと、お肌の気になることは複雑化してくるのが普通です。

その中でも深刻な悩みにもなりがちなのは「たるみ」。

これらはメイクでごまかすことが難しく、顔全体の印象にも強く影響を与えるため、気になりはじめるとけっこう辛いところですよね。

「年だから仕方ない」そう思いつつも、同年代のお友達と比べてみたり、化粧品のCMに出ている女性の年齢と比べてみたり……何とかできるのならしたいと思うのが人心というものでしょう。

しかも、できるなら美容形成のような大それたことでなく、手軽な化粧品で。

はたして、「たるみ」が化粧品で改善可能なのかどうか、歴19年のエステティシャンが美容成分の観点だけでなく現場感覚も織り交ぜて、現実的な「ほんとうのところ」を書きます

時間がない人、文章が苦手な人向けにざっくり結論

フェイスラインのたるみに関しては、化粧品だけでもできることがある

目の下のたるみの改善については化粧品では難しい、根本的なケアは形成外科での手術のみ

目の下のたるみを予防するための化粧品でのケアを35歳ごろから、遅くとも40歳にははじめて欲しい

たるみの原因

根本的には肌のいちばん下の組織の劣化です。

具体的には真皮のコラーゲンの質が低下し、コラーゲンを支えるエラスチンというものが脆くなることで肌を支える力が弱っていきます。

主な原因は紫外線ダメージと老化です。

近年は特に紫外線……特に、真皮まで透過して肌細胞を傷つけることが分かったA波の影響が大きいのでは、と考えられているようです。

ただ、一生涯に浴びる紫外線の8割ほどは10代までに浴びている、という風にも言われはじめているとおり、たるみが気になりはじめた40代・50代から紫外線対策をしてもたるみへのアプローチとしては遅いということになってしまいます。

シミの予防という観点では十分に意味はありますけれどね。

今の10代、20代は幼少期から紫外線対策の重要性が浸透して育っている世代なので、この方たちが40代50代になったころには、もしかすると今よりたるみやしわの悩みの質や量がマイルドになっているかもしれません。私は今からそれを楽しみにしています。

話戻しましょう。

今の40代50代は時代背景もあって、若い頃はろくに日焼け止めも塗らなかった世代です。

果たして今からケアできる方法はあるでしょうか。

たるみへのアプローチは5点で考える

たるみの原因で書いたとおり、根本的には肌の一番底の部分である真皮組織の劣化なのでもちろん、そこへのダイレクトなケアが効果的ということにはなります。

その他に、根本的ではないけれども見た目に影響を及ぼしている「たるみ」ケアには、表皮、皮下脂肪、筋肉、むくみに対してのアプローチが有効な場合があります。

順に書いていきます。

表皮のケア

肌が乾燥しているとハリやつやがなくなります。

冷蔵庫に入れてあるきゅうりやにんじん、大根を思い出して見てください。ビニル袋やラップに包まずにそのまま入れると水分が抜けて、しんなりしていきます。あの状態です。

軽いたるみや年齢の若い方のたるみは乾燥、うるおいケアをすることでお顔全体の見た目がぐっと良くなります。また、乾燥ケアはスキンケアのなかでも最も基本的かつ、小さな予算で可能な分野なのでたるみが気になった時は真っ先に行って欲しいケアです。

化粧品で行う保湿ケアについてはこちら↓
皮膚科学発想の保湿ケア〜実践編〜

肌の保湿の仕組みについてはこちら↓
皮膚科学発想の保湿ケア〜理論編〜

皮下脂肪のケア、むくみケア

ふっくらしている体型の方やむくみやすい体質の方は、皮下脂肪やむくみへのアプローチを行うことでスッキリします。主にフェイスラインのたるみや二重あごに効果を発揮し、見た目がシャープになります。

具体的には血行促進成分や、脂肪分解成分が入ったマッサージクリームをたっぷり使い、フェイスラインにそってマッサージします。

この時にポイントはマッサージクリームをケチらないことと、肌表面を強く押したり擦らないこと。

肌は物理的刺激にとても弱く、肌表面をこすると色素沈着といって茶色っぽく変色してしまいます。また強い力をかけると、たるみやしわの根本原因である弱った真皮組織をさらに傷めてしまい、深刻なたるみやしわを生んでしまうこともあります。

マッサージクリームをケチるとクッション性が足りず、肌の表面を擦ってしまったり、存外に強い力が肌に伝わってしまいます。ここは覚悟を決めてたっぷりの量で優しくマッサージしたいところです。

筋肉のケア

たるみケアというと、一般の方は真っ先にこちらをイメージされるのではないかと思います。

少し前にフェイスラインのマッサージ器がたいそう流行ったのも納得ですね。

ここまで読んでいただけた方ならすでにご想像のことと思いますが、あのマッサージは御法度です。

マッサージクリームやジェルなどのクッションなく、しかも肌表面に強い力をかけると、たるみやしわの根本原因である弱った真皮組織をさらに傷めます。真皮組織へのケアは2024年現在でもかなり難しく、形成外科以外でできるケアは全て予防的ケアです。

娯楽以外の目的でお顔へのマッサージはお勧めしません。

美しいお肌を保ちたいのならリフレッシュのためだけに、ごく稀に、に留めてください。

元々お顔はよく動くところなので、年齢を重ねても太ももの前の筋肉にように極端に衰えたりはしないと考えられています。つまり、お顔のたるみケアの中でも、筋肉へのアプローチは優先順位が低いところです。

ただ、ここ数年で塗るだけで筋肉にアプローチできるような種の化粧品成分も出てきています。

私もしばらくの試用を経て施術に活用したりしていますが、確かに即効性があってすごいんですよね。まだそれほど一般的な成分でなく、ちらっと調べたところ、まだ市販品にはほとんど使われていないようだったのでここでは割愛します。

たるみ対策のホームケアにおいては、筋肉へのアプローチは優先順位が低く、2024年現在では行う必要がないと考えていただいて良いかと思います。

悩ましい目の下のたるみは予防的ケアが重要

たるみの中でも最もお顔全体の印象に影響することからご相談も多い、「目の下のたるみ」。

これは残念ながら化粧品やエステできることは少なく、すでにあるたるみを根本的に解決するには形成外科での手術のみです。

目の下のたるみは以下のようにできています。

①もともと薄い下まぶたの皮膚が、加齢に伴ってさらに薄くなる

②眼球を守るための眼窩脂肪を皮膚が支えられなくなり、前に出てくる

③前にでた眼窩脂肪の周りが陰となり、深いしわやたるみに見える

このため、化粧品やエステ領域では下まぶたの皮膚が弾力を保てるよう予防的ケアが重要です。

具体的にはコラーゲンの産生促進をするような成分の使用、美容アプローチ(イオン導入など)を肌の劣化が進む30代半ば頃からはじめ、継続します。

また、近年では細胞を再生したり活性化するような種の美容成分も出てきています。それらの一部は研究データ上は真皮に到達するものもあるようです。

日々のスキンケアにそういった最新の美容成分を取り入れていっても良いでしょう。

増コスト0で今すぐできる、肌の乾燥対策

湿度が下がってきましたね。

私の住まう札幌はすでに室内は40%台がデフォルトです。

対策なしだと30%台を見かけることも……オソロシイ。

定期的に拝見させていただいているクライアントにも、顕著に乾燥傾向が見られるようになってきました。

今日はコスト増ゼロ、何も買い足さず、手持ちのスキンケアアイテムを変えずにできる肌の乾燥ケアをご紹介したいと思います。

使っている化粧品を全体的に増量する

お使いの化粧水や美容液、クリームの使用量を増やすという超カンタンな技です。

簡単ではありますが、実はそれが有効な背景がちゃんとあります。

消費者が毎日のスキンケアに使用しているスキンケア化粧品の量は、メーカーが想定している量の1/2から1/3程度に留まっているというデータがあります。

つまり、メーカーが推奨している量よりも実際は遥かに少ないことが多いのですよね。

私は長年サロンを運営しており、10年以上のお付き合いをいただいているクライアントも少なくありませんが、そのような美意識が高く、スキンケアにも関心が高い方たちでさえ定期的にお声がけさせていただかないと、いつの間にか使用量が大分推奨量よりも減ってしまっています。

かくいう私もそうです。

分かっていても、日々の忙しさに流されて……または、節約意識が高じて、つい使用量を控えめにしてしまうのが人心というものだと思います。

それで問題がないのなら別に悪いことでないと思いますが、肌のコンディションが気になってきたら使用量が減っていないか確認してみてくださいね。

ところで、化粧品のパッケージの裏書には「適量使用する」と書いてあることが多いですが、この適量とは一体どのぐらいでしょうか。

製品と使う人の顔の大きさによって多少違いますが、

化粧水=500円玉大

美容液=さくらんぼ大

クリーム=パール粒大2つ、またはさくらんぼ大

だいたいこのぐらいを1回分の使用量の目安にしておくと良いと思います。

このぐらいで使っていくと、化粧品の減り具合はどうなっていくかというと……

タンク式のクリームであれば最も一般的な容量は30gですが、30gは1か月で使いきるくらいです。

化粧水はテクスチャー(質感)によってずいぶん違いますし、容量も製品による幅がかなりあります。よく見る容器容量としては100ml~220mlくらいかと思います。大体1か月あたり120ml程度使うと1回500円玉大くらいになるでしょう。

ちなみに、使用量を増やす際は美容液とクリームを特に意識すると有効です。

心情的にも行程的にも増やしやすいのは化粧水だと思うのですが、化粧水は90%以上がただの水なので増やしたところでちょっとふやけやすくなるだけです。

それに対し、美容液やクリームは基材に対する美容訴求成分の含有量が多くなっているので、肌に働きかける力が強いです。

手持ちのクリームでパックをする

近ごろはホームケアのパックとしてはシートパックが主流ですが、シートパックはパックのなかでは「手軽である」「扱いやすい」という利便性の観点ではメリットが目立ちますが、スキンケア効果からはエタノールの含有量が高いことや、シートに薄い不織布が採用されていることが多いなどデメリットやリスクが目立ちます。

今も昔も保湿ケアとして最高のパックは「石膏パック」です。

ただ、石膏パックはホームケアとして重要な「手軽さ・やりやすさ」という要素をすべて投げ捨ててしまっています。

また、誤って直接肌につけてしまうとトラブルを起こすなど扱いが難しいため、今やエステサロンでも避けられることが少なくありません。業務用パック剤の主流もジェル、クリームになっています。

そこで私はお手持ちのクリームによる、クリームパックをご提案したいと思います。

いつもスキンケアに使っているクリームを2倍~3倍程度、お顔に塗ったくります。

そしてその、ぬらぬらな状態のまま寝るだけという超簡単なケアです。

さらに効果を増すなら、塗ったくったあと、口と鼻の部分を避けてラップで覆い、7~8分程度放置します。ラップは包帯状にはさみで切り、横向きにフェイスラインを引き上げるようにして貼り付けると良いです。リフトアップ効果も望めます。

翌朝はいつもどおり洗顔をし、スキンケアをするだけでOKです。

簡単です。何も買い足す必要はありません。

でもびっくりするぐらい効果があります。

いくつか注意する点を上げるとすれば、

クリームに保湿成分が含まれていること、抗老化成分である高濃度のレチノールやメラニン還元効果のあるハイドロキノンなど、まぶたの上に塗るには適していない成分を含んでいないこと、などを確認しましょう。

一般流通品を使用している場合はそんなに気にする必要はないと思いますが、業務用メーカーの製品などを使用しているとクリームはけっこうその作りが多彩です。購入元に確認してください。

あと些末なことですが、ぬらぬらで眠ると枕やその周辺を汚すことは必至なので、枕にはぜひフェイスタオルを1枚敷いてください。

あと、大事なことですが、クリームをたっぷり塗るというのはけっこう勇気が要ります。

トーストにいつもの倍バターを塗るのと同じか、それ以上に勇気が要ります。

これは、エステなんだ。

ただの日常のスキンケアじゃない。セルフエステだ。

そういう強い意志をもって己を奮い立たせ、怯まず、ぬっらぬら、テッカテカに光るぐらい塗ってください。

高級クリームを使用している場合は心が折れやすいと思いますので、パック用に安価なクリームを用意すると心理的負担が少ないかもしれませんね。こういうご時世なので余計なストレスは抱えずに済む手段を採用して欲しいと思います。勇気の無駄遣いはいけません。

買い足さず、何も変えずに今すぐできる肌の乾燥ケア まとめ

美容液、クリームの使用量を増やす

お休みの前日など週1回程度、手持ちのクリームでパックをして寝る

いずれも簡単でありながら、職歴10年超のエステティシャンが自信を持ってお勧めできるアプローチです。

ぜひお試しくださいね。

コロナ禍を経た昨今のスキンケア事情

ずいぶんおカタイ表題になってしまったのですが、久々の更新1発目はこれから行きたいと思います。

何を考えるにせよ、何の話をするにせよ、やはりまずは大きな枠を捉えておくことが重要だと思いますので。

2023年現在のスキンケア事情 ざっくり結論

時間がない人、文章読むのが苦手な人向けに結論を簡単に。

効果を重視したスキンケアの考え方と製品は第三世代へと移行中
油分でフタ(第一世代)
足りないものを補う(第ニ世代)
自分の細胞を賦活する(第三世代)→今ココ

娯楽性の高いスキンケアは下火
香りや感触を楽しむタイプのスキンケアアイテムは減り、実用性に重点を置いた製品が増えている。

価格と性能が比例しないのは変わらず。しかし、安くて効果の高い化粧品は存在しない
高い化粧品が必ずしもパフォーマンス(性能)に優れているわけではないが、安くてスキンケア効果の高い化粧品が存在しないのも変わらない事実。それは、美容成分には「原価」があるため。ここで言う、値段が安いの定義はおおむね千円台。

順に少し詳しく書いていきます。

最新スキンケアの考え方は「自分の細胞を活性化する」

かつて社会的地位が高い人や経済的に裕福だった人たちだけのものだった「スキンケア」が、庶民にまで広がったのは江戸時代だと考えられています。それから数百年を経て、近代スキンケアが広まったのは今から4,50年前。

肌に良い作用をもたらすことを目的に作られたスキンケア化粧品の考え方は、いったいどのように変わってきているのでしょうか。

第一世代 油分でフタをして水分を逃さない

肌の水分を油分でフタをすることによって守る、逃さないという考え方でつくられた化粧品が最初です。油分はオリーブ油やホホバ油などの植物性の他、動物性由来のスクワラン、酸化に強い鉱物油など様々なものが使われてきました。

ところが皮膚科学が発展するにつれて、油分は肌の保湿にあまり重要でないことが分かってきました。油分が肌の水分を守るために担っている役割は全体の2,3%ほど。多くは、自前の皮脂で十分であることが分かりました。

こうして、肌を健やかに美しく守るためのスキンケアは次の時代に突入します。

第二世代 足りないものを補う、有用なものを足す

肌の水分を守っているのは主に角質細胞間脂質。今やすっかり名前も機能もその重要性も定着した「セラミド」がスターです。角質細胞間脂質の他には天然保湿因子であるアミノ酸、尿素など。そして主に真皮で重要な役割を果たしているコラーゲン。このあたりはすべて保湿剤です。

そして、コロナ禍以前──2020年頃まではこのあたりが機能性の高い化粧品の主要成分でした。

足りないものや、肌にとって有用な成分を補う、足すという考え方が主流でした。この流れに重なるようにして次の流れが起こってきていました。

第三世代 自分の細胞を活性化する

足りないものや有効な成分を補うという考え方には、限界がありました。

例えば、コラーゲンは真皮で肌の土台を担っている大事な成分ですが、化粧品成分のコラーゲンは分子が大きく、真皮まで到達することはできません。また、人のコラーゲンと化粧品成分のコラーゲンはつくりが異なるため、同化することはありません。

そこで登場したのが、自分の細胞を活性化する「細胞賦活」という考え方です。

十年ほど前から美容商材の展示会や、一部の先鋭的な科学的化粧品を作っているメーカーではその種の製品が見られましたが、コロナ禍以前までは大変に高価な製品が多数でした。

美容成分の濃度が高くなるクリーム、美容液でだいたい1万円台後半から3万円台。なかには30gと標準的な容量のクリームで6万円、8万円というものもありました。

それがコロナを経た現在は、1万円未満……中には5千円台で濃度は高くないもののそういった成分を含み、なおかつパフォーマンス的にもある程度の満足を得られる製品が出てきています。

娯楽性の高い化粧品の流行は下火

コロナ禍以前……私の感覚的にはだいたい2018年頃から、スキンケア化粧品の動向は二極化の様相をていしていました。

実用性VS.娯楽性です。

突然ですが、この記事をお読みの皆さまは何を基準に化粧水や美容液を選んでいますか?

お値段? それとも、化粧品そのものの感触? 塗ったあとの肌の感触?

ベタツキがないかどうか? 匂いが好みかどうか?

多くの方が、今あげた要素を総合的に判断して結論を出しているのではないでしょうか。

女性の場合は物事の判断基準が「感情」の人が多いので、その過程や要素はうまく言語化はできないけれど「好き」か「嫌い」──それを、「合う」「合わない」と表現されるのかもしれません。

肌の傾向はそれぞれ異なりますが、肌のつくりや仕組みは皆一緒です。それを明らかにし、それを踏まえたアプローチを行うのが皮膚科学だと思います。科学に基づいたアプローチは当然成果をあげます。その考え方にない化粧品が「娯楽性の高い化粧品」です。

香りやテクスチャーの心地よさや品の良さなどに重きを置いているものがあれば、自然派、地域密着など独自の思想に基づいて作られた化粧品があります。

この辺りの化粧品は、コロナを経て一気に勢いがなくなったようです。

社会全体で経済状況が悪化したので消費者のニーズもより実用的に、実務的なものに変化した結果かもしれません。

高い化粧品が必ずしも良い訳ではない。ただし、安くていい化粧品も存在しない

スキンケア化粧品の値段とスキンケア効果は比例しません。お値段が高いからといって、必ずしもスキンケア効果が高いとは言えないのです。

ただし、値段が高い化粧品の中には実際にとんでもないスキンケア効果を発揮する製品もあります。

しかし、逆にお値段が安くていい化粧品も決して存在しません。

これも悲しいことに事実で昔から変わりません。

ここでいう「お値段が安い化粧品」の定義とは、千五百円以下の製品のことです。

フリーのエステティシャンとして、科学的視点で15年以上に渡って数千点の化粧品を見て、手にとってきましたが、少し前ならば千円以下、今のように物価高の状況では千五百円以下の化粧品は、化粧水であってもスキンケア効果を期待するのは厳しい、というのが私の結論です。

化粧品の美容成分には原価というものがあります。たとえば、セラミドの中でも主に保湿に関わっていると考えられているセラミドⅡは非常に高価な成分です。千円台の化粧品にも表示上は入っていることがありますが、実際に使ってみるとその存在を全く感じません。

濃度が薄すぎるのです。美容成分はそれなりの濃度がないと体感できるくらいの効果を発揮しません。

それなりの濃度とは、目的とする効果によって異なりますが、最低1%以上です。3%ほどだと大抵しっかり存在を感じますし、5%以上は逆にリスクの心配をする必要が増えてくるかと思います。

そのため、保湿を目的としてセラミドⅡを含む製品を探し、予算を加味して千五百円の美容液を購入するよりは、合成できるようになって安価になったヒアルロン酸を高濃度に含む同じ価格の美容液を使った方が総合的なスキンケア効果は高くなる……といったようなことが、現実ではよく起こります。

ここが化粧品選びを難しくするひとつの理由かと思います。

長年、たくさんの方のスキンケア化粧品選びのご相談にのってきましたが、誰もが皆さんおっしゃいます。

安くていいのを教えて欲しい、と。

私もできるのならそうして差し上げたいと思います。ただでさえ、先の見えない世の中です。

ただ、なかなかそうはいかない事情があるというのは事実です。

2023年現在のスキンケア事情まとめ

コロナ禍を経て、スキンケア化粧品の傾向は大きく変わっていこうとしています。

これからは、自分の細胞を賦活する「第三世代」のスキンケアアイテムに注目したいところです。

とはいえ、スキンケアは必ずしも美肌づくりのために行わなければならないものではありません。

朝、自分にスイッチを入れるために。

夜はリラックスのために。

忙しい現代人が気持ちの切り替えをする時間のおトモでもあります。

ご自身の美容観をもって、適切なアイテムを選んでくださいね。

日焼け止めと紫外線対策のほんとうのところ

紫外線の強い季節です。

お砂場遊びの大好きなうちのチビ(2歳)も健康の観点から紫外線対策をしていますが、手の甲だけはノーガードなのでかなり黒くなってきました。

あ、この赤くなったりせず、いつの間にか黒くなっている現象を「サンタン」といい、主に紫外線A波によって引き起こされます。

ちなみに海やプールに行ったときによく体験する、赤くなってヒリヒリする日焼けは「サンバーン」といい、紫外線B波が主犯です。

紫外線A波への防御指数がPAで、紫外線B波への防御指数がSPFです。

そんな、知ってるようでよく知らない紫外線や日焼け止めのアレコレを今日は分かりやすくまとめていきます。

過去にも似たような記事はいっぱいあるんですが、関心事の高い事柄だと思うので気にせずまとめていきます。

日焼け止め関連の検索でかなりご訪問いただいているようですので。

8/3追記:この記事の内容をさらっとまとめた動画(約2分)を作りました
時間のない方、文字を読むのが苦手な方は動画もいかがでしょうか

UVカット効果の高い日焼け止めは肌に悪いの?

必ずしも悪いわけではありません。

SPF値やPA値の高さそのものよりも、使われている紫外線防止剤の種類や成分組成によって、肌への負担の中身が変わってきます。

50+のような高SPF値の日焼け止めに使われている紫外線防止剤は紫外線吸収剤であることが多いです。紫外線吸収剤は皮膚のうえで化学変化を起こし、紫外線をカットするので化粧品の成分のなかでは負担が大きい方です。環境省の紫外線防止マニュアルでは「稀にアレルギーを起こすことがある」というマイルドな表現で注意喚起されています。現役ゴリゴリ、職歴16年のエステティシャン的には、「稀(まれ)」よりは、もうちょっと頻度高い印象です。

小さなお子さんや肌の基礎力が落ちてきている中年以降では、可能ならば避けた方が無難なのではないかな、と思います。プールや海、キャンプなどのたまのレジャーに使う分には多くの場合問題ないかと。肌荒れしやすい人はシーンを問わずに避けた方が良いかと思います。

紫外線吸収剤不使用のノンケミカルタイプの日焼け止めは、酸化亜鉛や酸化チタンなどの顔料で紫外線を反射します。酸化亜鉛や酸化チタンは、ファンデーション等にも使われる「粉」ですからアレルギーは起こしにくいのですが、粉であるため、皮脂を吸着しやすくなります。夏場は気温があがるため皮脂が出やすくなるので、多くの方にとってはありがたいことですが、皮脂が極端に少ない人では、これによって乾燥しやすくなることがあります。

また、酸化亜鉛や酸化チタンなどの紫外線散乱剤は「粉」なので、そのままでは密着度が低いため、シリコーン油などの撥水剤と一緒に使われます。密着度の高いノンケミカルタイプの日焼け止めは非常に日焼けしにくく、アレルギーを起こしにくい反面、とってもクレンジングしにくいです。クレンジングの際にごしごしこすりすぎたり、強すぎる洗浄力のクレンジングを繰り返し使うことで肌を傷めることがあります。

水性ジェルかクリームタイプのクレンジングをたっぷり使い、顔全体で40秒ほどかけてていねいにやさしくクレンジングすることで、それを防げます。(ちなみに、この方法では密着度の高い日焼け止めの落とし残しも起きにくいです)

日傘と帽子があれば、日焼け止め塗らなくていい?

美容の観点からは必要です。

紫外線は空から地上にまっすぐ降り注ぐものの他に、散乱光といって周囲の建物や自然物などで反射したものがあります。割合としてはこちらの方が多く、6割程度は散乱光といわれています。

日傘と帽子が直接的に威力を発揮するのは直射光ですから、たとえそれらを装備していてもお顔には日焼け止めを塗った方が、美容の観点からはよろしいかと思います。日傘と帽子は赤外線対策(熱中症予防)には有効なので、大事ですけれどね!

ウォータープルーフの日焼け止めは肌に負担なの?

ウォータープルーフであること自体は、負担にはなりません。

耐水性や撥水性を付与する成分は、主にシリコーン油ですが、これ自体は大変一般的な成分で肌への刺激も問題にされていません。ただ、クレンジングしにくくなるので、落とすときにごしごしこすったり、オイルクレンジングなどの洗浄力が強く、さらさらした質感のクレンジングを日常的に使うと、それらが負担になることはあると思います。

詳しくはこちらもどうぞ↓
ウォータープルーフの日焼け止めは肌に負担なのか?(過去記事)

化粧くずれしにくい 皮膚科学的夏のスキンケア

気温が高い日が増えてきましたね。

札幌でも室内の温度計が25℃以上という日を、すでに何度か見ました。

気温が高くなってくると、汗をかくだけでなく皮脂も出やすくなるので化粧崩れ、テカリが気になってきます。今日は科学的観点で、それらを予防・緩和するケアについてまとめていきます。

もはや完全に動画の時代だな、と思ったので不格好ながら今回のブログの内容を動画にしてみました。お時間がない方、文字読むの苦手な方、こちらはいかがでしょう。

※喋ります。音量注意してください。

くずれ・テカリを予防する夏のスキンケア結論

油分少なめ、保水成分たっぷりを意識する

ビタミンC誘導体を含む化粧水か美容液を取り入れる

解説していきます。

油分少なめ、保水成分たっぷりのスキンケアとは?

まず、前提として基本的なスキンケアのために用意するアイテムは、化粧水・美容液・クリームの3点です。科学的な観点からは、乳液ではなく絶対クリームがおすすめ。乳液とクリームには天と地ほどの埋められない違いがあります。

このうち、クリーム以外は油分やシリコーンオイルなどの油様成分を含んでいないものを選びます。

市販の化粧品は、てっとり早く肌に柔らかい質感をつくりだすために、それらの成分が含まれているものも少なくありませんが、自前の皮脂が増える夏場は化粧品に含む油分や油様成分が化粧崩れの一因になってしまいます。

油分は、お肌のうるおいを守るのにたった2~3%の役割しか担っていません。

参考:
皮膚科学発想の保湿スキンケア
お肌のうるおいってそもそも何のこと?

セラミドやセラミド様成分、ヒアルロン酸、リピジュア(ポリクオタリウム-51)などの機能性が高い保湿成分をたっぷり含む美容液、クリームを選びましょう。

ビタミンC誘導体を含む化粧水か美容液を使う

ビタミンCには有名な美白作用(しみそばかすを予防)の他、過酸化抑制、コラーゲンの産生促進などさまざまな美容効果があり、古くからエステや美容皮膚科領域で重用されています。

このうち、お家で肌で塗って得られる大事な効果のひとつが、「過剰な皮脂の抑制」です。

ビタミンC誘導体を含む化粧水や美容液を使うことで、さらっとした肌が続く効果を望めます。

重要なのは、ビタミンC(成分名アスコルビン酸)でなく、ビタミンC誘導体を含む化粧品を選ぶこと。VCは非常に安定性に欠ける成分で、アスコルビン酸ではただ塗るだけは美容効果は得られず、美容機器と併用することではじめてその効果を発揮します。

体内で酵素によって分解され、少しずつビタミンCとなり代謝されるなどの機序をもつ、誘導体の形になったものは塗るだけでもその効果を得られます。(医薬部外品指定成分です)

成分名は、アスコルビルMgなどアスコルビルほにゃらら または ほにゃららアスコルビルの形になったものです。

濃度がそれなりにないと働かないので、1%から5%くらいの化粧品がおすすめです。

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基本的なスキンケアに必要なアイテムで「クリーム」を推していますが、クリーム、お使いでない方が多いと思います。

お使いでない理由は、質感が好きじゃない、価格が高いものが多い、などではないでしょうか。

お気持ちやご事情はリアル店舗でうかがってきたので、よく分かるのです。

シャバっとしたみずみずしい質感が好まれるようになって久しいですし、ますます美容ケアにかける費用は抑えたくなるでしょう。

ただ、年齢を重ねた肌……個人差はありますが、やはり35歳くらいからはクリーム抜きのスキンケアラインナップをつくるのは、なかなか難しいものがあります。

クリームは一番美容成分の濃度が高く、油に溶ける性質(油溶性)のものが多い美容成分を効率よく取り込めるアイテムです。ご予算の関係でとなると、どうしようもないのですが、スキンケアに効果を求めたい方は絶対に検討して欲しいと思います。

保湿に特化したクリームなら、お手頃価格でこちら↓とか、なかなか成分がいいですよ。

肌ラボ 極潤 ヒアルロンクリーム

ヒアルロン酸が主体なのですが、「アセチル化」といって肌に定着しやすい操作がされた上等なヒアルロン酸が入っています。ヒアルロン酸は単体だとセラミド(様)成分より体感的な保湿力は劣りますが、シリコーンオイルなどのエモリエント剤が主となった市販化粧品が多いなかでは、スキンケアに取り入れるとやはりなかなかいい変化と実感をもたらしてくれます。

原材料が安価なわりに、イイはたらきをしてくれるヒアルロン酸ですが、ネックはやっぱり「ぺったりした質感」ですね。スキンケア効果はさておき、好みはどうしても分かれそうなところです。

でも、今までクリームを使っていない方、乳液を使っている方は、だまされたと思ってまずはこの辺りのクリームから試してみていただきたいな、と思います。普段の自分の肌がどのぐらい乾いていたか、よく分かると思うんですよね。

化粧品業界の今と美容ケアの今後

近頃更新頻度がとみに落ちてしまっているのですが、それは私自身が美容ケアのあり方や化粧品の選び方に迷ってしまっているから。2年以上という長期に渡るコロナ禍を経て、さらには、とても21世紀のこととは思えないような不条理な暴悪があり……今なお罪なき人びとが苦しんでいるという、とんでもない時代です。

エステやスキンケアのような美容的ケアって、豊かさが前提なんですよね。

だから、古代から中世はごく一部の社会的地位の高い人や、経済的に豊かな人しかなじみがなかったわけです。

日本では、いわゆる美容ケアの原型のようなものが庶民にまで広がったのは、江戸時代中期だと言われています。江戸時代は、ご存じのとおり約三百年間という長きにわたって戦乱のない、世界的に見ても稀な平穏な時代です。多少の事件や災禍はあっても、豊かな社会があったからこそ庶民もそういうものに手をだす事ができたのですよね。

いつの時代のどの国でも無くなることはないものの、社会や時代によってごく一部の人のために存在するものか、広く庶民にまで親しまれるものか変化する左右するという点では、芸術分野と同じ要素があるのかもしれません。

今はそのベースとなる社会が急激に変わりつつあるし、先の方向も見えにくい。

いったい、これからの世の中で美容ケアというのものは、どんな人たちにどんな風に必要とされるのでしょうね。

今とても悩んでいます。

私は今の職……フリーのエステティシャンになって今年で17年目なのですが、この間ずっと化粧品は科学的観点で、お肌に本当に必要なケアを行えるものを扱ってきました。だからこのブログのタイトルは『皮膚科学の視点でスキンケアを考える』なのですが、こうなってくるともはやこういう考え方自体が時代に合ってきていないように思えます。これもやはり豊かな社会が前提の考え方です。

化粧品業界も今は本当に大変です。コロナによって人と会うことや関わることが制限され、そのうえマスク生活ですから、スキンケアやメーキャップの必要性そのものが低下してしまいました。

業績が悪化しているうえに、化粧品に使われる原材料の高騰や、海外のロックダウンの影響などによって容器類が入ってこなかったり、いろいろあるようです。長く化粧品・エステ業界の末席に身を置いて生きていますが、製品の製造終了、ブランドの統廃合など業界の動きはこれまで見たことがないくらいめまぐるしい。

今に、もしかすると「化粧品を選ぶ」ということ自体ができなくなる……とまではいかなくても、選択肢はこれまでの豊かな時代よりもずっと乏しくなるかもしれない。まあ、そもそもニーズが低下しているし、そういうものにお金や時間をかけられない人も増えてくるのだから、広い意味で「淘汰」といえばそれまでかもしれませんけれど、ね。帰趨がそうならそれで、構わないんですけれど。

ぐだぐだ言っていますが、今はまだこの業界に身を置いている訳です。なので、悩んでいるだけではどうしようもないので、いろいろ、あれこれ考えて動きだしてはいます。

その一環で、これまでとは少し違った視点で化粧品を見つめ、掘り起こし、試用していたのですがその影響ですっかり肌が荒れてしまいました。

エステティシャンになったばかりの頃もものすごい種類の化粧品を試しましたが、あの時は20代だったから無茶な試用にも耐えられたんだよなあ……と、ちょっと白目を剥いてしまいます。

まあ、たとえ生物学的には衰えていても今の40代の自分の方がしっくりきているし、好きですけれどね。

そんなこんなで(すごい乱暴な総括……)化粧品や美容ケアのことについて、「こんなことを知りたい」「こんなことが気になっている」なんてことがありましたら、ぜひお教えください。

ブログにコメントいただいても嬉しいですし、クローズドの方がよければ個人的にメールいただいたり、リアル店舗のお客様はお会いした際にでも、何でもお声かけてもらえると嬉しいです。

ちなみに、こんな生業で、こんなことを言っている私は、休日は髪ぼさぼさ、すっぴんで部屋着がデフォルト。しかも、できればそのまま一歩も外に出たくないです。

仕事柄、もしくはアラフォーの社会人として人様に不快な思いをさせないよう、仕事のときはなるべく外見を整えるように心掛けていますが、本来的には自分の外見に興味は薄く、人様からどう見られるか、ということに関心は薄いです。それよりも本を読んだり、分析したり、考えをまとめたりすることの方が自分にはよほど重要なので。

一般にイメージされるようなエステティシャンとはちょっと違っているかもしれません。だからこそ、どんな些細なことでも気兼ねなく、おしゃっていただければ思います。

なんかエステティシャンって美意識高そう(笑)じゃないですか。確かに、実際そういう人も多いんですけれど……自分は全然違うので、ものすごい基本的なこととか、初歩的なこともご質問いただいたりすると嬉しいし、面白いです。

最後に宣伝入れておきましょうか。

科学的視点で化粧品をお選びしています。
業務用メーカー製品を優先的にご紹介しているので、お値段のわりに高いスキンケア効果が得られると長年、たくさんの方にご愛用いただいています。

恥ずかしがり屋さんや、お忙しいあなたにはセット商品がおすすめ。

ざらつき、くすみ、吹きでものができにくい土台肌をつくる、クレンジングと洗顔のセット。

根拠ある有用性の高いスキンケアに興味が出てきたときは、まずはこちらのセットを。
化粧水、美容液、クリームがセットになっており、約2ヶ月お使いいただけます。

オンラインショップでは、この他にもニキビケアセットや、きほんの抗老化ケアセットなどさまざま商品を取り揃えています。

また、カウンセリング後は、個別にクレンジングだけ、洗顔だけ、美容液などもご購入いただけます。

皮膚科学的観点のUV対策まとめ

紫外線が強い季節になってきました。

今年は2年ぶりに公的に規制や自粛を求められることのないGWということで、お出かけやレジャーなど計画している方もいらっしゃるのではないでしょうか。

将来のしみやしわの予防という美容観点からはもちろん、皮膚がんの予防などの健康観点からも適度なUV対策は大事です。

UV(紫外線)対策は過去、かなりまとめてあるので、今日はそれをピックアップしてみたいと思います。

日焼け止めのSPF値とPA値について

SPF値はUV-B(紫外線B波)への対処性能のことで、国際的な指標。PA値はUV-A(紫外線A波)への対処性能のことで、日本独自の指標。

個人差はあるものの、SPF1=約20分間、やけどのような赤みと火照りを引き起こすサンバーンを防ぐという意味なので、日常使いではSPFは30程度、PAは++(ツープラス)から+++(スリープラス)ぐらいでOK。

参考過去記事:
美しい肌を守る日焼け止めの選び方③~SPF値とPA値の意味を知る~

科学的に肌に負担が少ないのはノンケミカル

日焼け止めに使われる紫外線防止剤には紫外線散乱剤と紫外線吸収剤がある。

アレルギーを起こしにくいのは、紫外線散乱剤(ノンケミカル)タイプ。ただし、散乱剤は酸化鉄や酸化亜鉛などのファンデーションの土台にもなっている”粉”なので、皮脂を吸着しやすい。使用感が好みに合わない場合はあるかもしれない。

参考過去記事:
美しい肌を守る日焼け止めの選び方① ~成分に着目する~

UV防止効果を重視するなら形状は”クリーム”推奨

日焼け止めのSPF値の測定は、1平方センチメートルあたり、2mgという規定量で行われている。これは、実際かなりの厚塗り。そのため、製品に表記されている紫外線カット効果を得ようと思ったら、感覚よりもそうとう厚塗りをしないといけない。

紫外線吸収剤タイプは、ジェルやスプレー、ローションにもできるが、そのようなテクスチャーの軽い形状だと、肌のうえに十分乗らないため「塗ったのに焼けた!」ということがよく起こる。

参考過去記事
美しい肌を守る日焼け止めの選び方② ~使いやすさに誘惑されない~

1500円以下で買える 優秀な日焼け止め

手間とお金がかかってしまったので、有料記事にしてしまいました。ごめんなさい。
ダウンロード版とWEB版があり、価格はどちらも220円です。

ダウンロード版はこちら
WEB版はこちら

昨年2021年公開記事ですが、今年も十分参考になると思います。

また、WEB版では冒頭部分、日焼け止めの成分等について詳しい解説が無料で読めます。

ご興味の向きはぜひ。

<ハンドクリーム>Neutrogena(ニュートロジーナ) ノルウェーフォーミュラ インテンスリペア ハンドクリーム

近ごろずいぶんハンドクリーム、ハンドケア関連ワードで検索がかかっているようなので、またハンドクリームについて書いてみたいと思います。

手の乾燥と荒れ対策のまとめ記事はこちらからご覧いただけます

今日はamazonで現在(2022年4月)ベストセラー表示がついている「ニュートロジーナ ノルウェーフォーミュラ インテンスリペア ハンドクリーム 超乾燥肌用」を取り上げます。

ニュートロジーナ ノルウェーフォーミュラ インテンスリペア ハンドクリーム 超乾燥肌用

Neutrogena(ニュートロジーナ)ノルウェーフォーミュラ インテンスリペア ハンドクリーム 超乾燥肌用 50g
487円(2022年4月amazonでの価格)

ニュートロジーナ ハンドクリーム 超乾燥肌用の全成分

水、グリセリン、セテアリルアルコール、フェノキシエタノール、セテアリル硫酸Na、エチルヘキシルグリセリン、パルミチン酸、ステアリン酸、硫酸Na、トコフェロール

ニュートロジーナ ハンドクリームの成分解説とパフォーマンス

とてもシンプルな成分構成です。どっぷり美容ケアに浸かっていて、その道で16年飯を食っている人間からすると、「超乾燥肌用、だ…と……?」と思わざるをえないかんじ。

基材(化粧品の土台)に油性原料のセテアリルアルコール、それに保湿剤であるグリセリン。フェノキシエタノールは防腐剤で、製品中に含まれる量はごく微量。そのため以後の成分は気にしなくていいです。

肌のうるおいや改善に関与するような成分は、保湿剤であるグリセリンのみ。セテアリルアルコールはいろんなはたらきがありますが、この場合は滑らかな質感をつくりだす、コンディショニング剤かな、と。

このブログにたどりつくような、美容マニアの方ならとっくにご存じの成分だと思いますが、グリセリンはいわゆる、古典的ではたらきの穏やかな保湿剤です。また、水に流れやすい性質なので、手のような頻繁に洗うようなところ──ましてや今は、しょっちゅう洗ったり、アルコール消毒したりするような状況なので、あっという間に流れてしまうと思います。

恐らく、「超乾燥肌用」表記の担保になっているのは、グリセリンの純度と濃度。

純度99%以上のものは医薬品分野で使われるもの。濃度は明記されておらず「メーカー比」となっています。一般にいって、化粧品の高濃度とはだいたい3パーセント以上くらいから。

とはいえ、所詮グリセリンなんだよなぁ……と思ってしまいます。撥水剤も入ってないしね。顔ならまだしも……すぐ流れちゃうのよ。

まとめ

ニュートロジーナ ハンドクリームは、普段ハンドクリームをぬる習慣がなかった人が、入門的に使うといいハンドクリーム。高い機能性を求めて、ハンドクリームジプシーしているような玄人向けの商品ではないと思います。

このハンドクリームの保湿機能を最大限に引き出す使い方は、とにかく小まめにぬること。ぬりまくること、です。

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こういう、殺伐とした世の中なのであんまりネガティブなことは書きたくないし、考えたくないんですけれど。「超乾燥肌用」表記が私のハートを燃え上がらせてしまいました。めっちゃひどい手荒れに切実に悩んでいる人が買っちゃったらどうするんだよ、と。

販売側がつけるコピーは自由ですからね。最近は景品表示法や薬事法にひっかかっている広告が増えてきて、また風紀が引き締められはじめましたけれど。いい傾向だ。いいぞ、もっとやれ。

ただでさえ、あこぎな、胡散くさい業界なので、作る側も売る側も、そして私のような扱う人間も倫理と節度は大事だと思います。ちなみに、最近一部で話題になった医療機器、HIFU(ハイフ)については、本家ブログの方で触れました

手の乾燥と荒れ対策 まとめ

時世柄、時節柄、手と顔の乾燥がヤバイことになっている方が多いのではないかと思います。

ほんとうに効果のある対策や使うべき化粧品、ハンドクリームについてまとめていきます。

手指の乾燥、荒れ対策まとめ

本気で手荒れを治す、防ぐにはどうしたらよいの?~皮膚科学の観点から~

肌荒れが起きる仕組みを分かりやすく

市販のハンドクリームの成分・実際の効果について

ユースキンA

パックスナチュロンハンドクリーム

手指の荒れと乾燥対策 3行まとめ

有効な対策は 物理的に守る・化粧品成分で守る・うるおい成分を与える

物理的に守るのは手袋、成分的に守るのはシリコーンオイルなどの撥水剤、与えるべきうるおい成分は1にセラミドやその類似成分、2に油分

残念ながら、流通しているハンドクリームに撥水剤とセラミド(類似成分)が両方含まれる、科学的な製品はほとんどない

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ほんとうに”効く”ハンドクリームは、残念ながらほとんど存在しません。

10年以上前から、たぶん累計で3百点以上のハンドクリームの成分を見ていますが、シリコーン油が十分に含まれており、セラミド(類似成分)も同時に含むという要素を満たし、なおかつ、その他の細かい条件(ややこしくなるので割愛します)も満たしており、わたしが皆さまに自信をもっておすすめしたいという製品は、たった2商品です。

化粧品はもともと、娯楽物としての側面も強いのですが、ハンドクリームが属するボディケア化粧品では特にその傾向が強いです。

顔はしみやしわ、乾燥、にきびなどがあるとけっこうストレスになるので、積極的にそこを何とかケアしようという発想の化粧品が存在するのでしょうが、ハンドケアは今まで化粧品業界も眼中外だったのかもしれません。

顔用の基礎化粧品を作っている会社が、ついでにボディケア用の商品も作っているというケースはありますが、逆はあまりないのもそれを暗に示しているように感じます。顔用化粧品とからだ用化粧品は同じ化粧品でもそれぞれテリトリーが違うのですよね。

コロナ禍によって、間接的にハンドケアのニーズが高まっているので、今後は少し情勢が変わっていくのかもしれません。

んじゃあ、今、実際に手荒れや乾燥に切実に困っている場合はどうしたらいいのかというと。

ひび割れや手荒れが発端となった湿疹などがある場合は、医薬品で治します。

そのうえで、水仕事のときはゴムやビニル製の手袋を着用、それ以外は現実的に可能な範囲で綿手袋をしたまま生活します。ポイントは、”現実的に可能な範囲”です。2歳の子どもにマスク着用させるか、などという想像力の欠如した話ではありません

ライフスタイル……具体的には、小さな子どもや介護の必要な方のお世話をしている方、手のかかるペットのお世話などをしている方は日中手袋をするのはほとんど無理だと思います。なので、そういう方は夜寝るときだけでも手袋をしておくと、それだけでも効果あります。寝ている最中に外れてしまうのはご愛嬌。

性能的にすぐれたハンドクリームはほとんど存在しないので、化粧品についてはフェイスケアの応用で対処します。

具体的にはハンドクリームは最低限しっかり撥水剤(シリコーン油)の含むものをチョイスし、ハンドクリームを塗る前に、セラミドやその類似成分をなるべく濃度高く含む美容液を塗ります。

そのうえからハンドクリームをぬればOKです。

美容液がなじみきる前に、ハンドクリームを塗ってしまってかまいません。セラミド系の成分は水溶性の成分ではないので…。

長いこと先が見えず、まったく、心もからだも懐もパッサパサに乾いてしまいそうですね。

せめて、懐や時間が許すかぎり、ご自身でご自分を十分に労わり、慈しんであげてほしいものです。

同居の方がいらっしゃる人は、感染リスクという点では一蓮托生のことが多いかと思いますので、親子やご夫婦、パートナー(性別によらず)、ご友人同士で塗りっこしてあげてもよいのではないでしょうか。

タッチセラピーというものが存在するように、人は他者のぬくもりを感じるだけでリラックスするものですから……