肌荒れが起きる仕組みをわかりやすく

手洗いとアルコール消毒によって手荒れがヤバイ!
そんな方も少なくないかと思います。
前回こんな記事を書きました。


本気で手荒れを治す、防ぐにはどうしたらよいの?~皮膚科学の観点から~

今回は実際にハンドクリームを取り上げながらもう少し掘り下げてみたいと思っていたのです、が……


一般の方が持っている肌荒れが起きるまでの過程のイメージと、実際に起きていることがけっこう違うということを改めて考えさせられました。


化粧品が安易に悪者になったり、軽んじられるのはかわいそう…


なので、肌荒れが起きるプロセス、仕組みについてもう少し書いてからにしたいと思います。

1.肌荒れが起きるしくみをイメージで理解しよう

本気で手荒れを治す、防ぐにはどうしたらよいの?~皮膚科学の観点から~』のなかで肌の構造と、肌荒れが起こる流れについてこのように書きました↓

肌には自らを守るバリア機能という仕組みがあり、本来はそれによってうるおいは守られています。肌の一番うえの部分、角質層の水分のうち、約80%ほどが角質細胞間脂質に、残り20%弱がNMF(天然保湿因子)によって守られており、皮脂によって守られているのはたった2,3%ほどです。これらの成分(要素)は水で流すだけ、何かに触れるだけで簡単に奪われます。また、加齢とともに角質層や真皮(肌の土台の部分)水分量やうるおいを守る物質の量も質も落ちてきてしまいます。そのため、若い人よりも年齢を重ねた人の方が肌荒れを起こしやすいのはご存じのとおりです。さらに、界面活性剤には油分と水分を混ぜる性質があるため、石けんやアルコールを頻繁に使うとこれらの成分が加速度的に奪われ、急速な肌荒れや回復しにくい肌荒れが起きます。

現場でカウンセリングをしていても、いろいろな場面で肌や化粧品についてご相談を受けていても、なかなかこのあたりがうまく伝えられないのですよね。


一般の方が持っていらっしゃるイメージと、実際に起きていることのあいだに、とても大きな差があるのを感じています。


そこで、今日はちょっと趣向を変えて数式チックなものを使って、イメージしやすく表現してみたいと思います。


【一般の方が持っている肌荒れのイメージ】

a+b=x
a:肌の状態。または、もともと持っている素質。一定で変わらないイメージ=0(ゼロ)
b:化粧品の刺激、または効果。効果はプラス、刺激はマイナスとする
* xの値がマイナスになったときに肌荒れが起きるとする

こんな感じではないでしょうか。


どうでしょう?


では、実際に起きていることを表すと、どうなるでしょう?


【実際の肌荒れのイメージ】

(a+b)-(c+d)=x

a:肌がもっているうるおい、一定に保とうとする働き。短期的には季節によって、中長期的には年齢によって変化する。一定ではなく常に変化している。しかも、変化は変化でも、振り子が揺れるようにしながら下降的に変化していると考えた方が適当
b:医薬品や化粧品などによる手当、保護
c:物理的刺激。手指の場合、物に触れたり、こすったり、洗ったりアルコール消毒したり。または化粧品の刺激、医薬品の副作用。後者の影響は少ない、もしくはまれ
d:栄養状態、睡眠、ストレス、病気などその他の要因
* xの値がマイナスになったときに肌荒れが起きるとし、abcdは正の数で固定とする

a+bの値がc+dの値を下回り、なおかつその状態がある程度持続したとき、はじめてカサカサになったり、赤くなってかゆくなったり、ということが起こる……というのが実際に起きていることのイメージに近いです。

2.〇〇(商品名)を使ったら荒れた! それはあり得る?

amazonなんかで化粧品の評価を見ていると、


〇〇(商品名)を使ったら荒れた!

という表現をよく見かけるし、実際にお客様からご相談を受けることも少なくないのですが、先にご紹介したように因果関係というのはそれほど単純なものではありません。

そもそも、薬事法上の化粧品の定義は「人体に対する作用が穏やかなもの」ですし、実際に刺激が強い成分はそんなに存在しません。過去に事故があり、因果関係が明らかになった成分は使用禁止になったり、配合上限が定められています。


思い出してみて欲しいのです。


ここ最近で化粧品(成分)による大きな事故は、加水分解小麦(その中でも一部の成分)とロトデノールでしか起きていません。小さめのトラブルとしては非常に高濃度のビタミンAもありましたが、そのくらい。世の中に星の数ほどの化粧品があり、辞書やデータベースを作れるほどの数の成分が存在しているのに、です。


顔用であれ、手指用であれ、体用であれ


この化粧品を使ったら荒れた

という場合に、実際に起きていることとしては、


もともと肌が弱っているところに、手当による補強が間に合わず、全体的な値がマイナスになった。


というのが、より正確な事実に近いのではないかと思います。


もちろん、特定の成分にかぶれる(アレルギーがある)人がいないわけではありませんが、10年超エステティシャンとして数多くの化粧品を扱いながら施術をしたり、スキンケア化粧品をご紹介したり、という仕事をしてきた体感としては、実際のところそんなに頻度は高くないように思います。


ちょっと分不相応なのでオマケ程度で書きますが、肌荒れとそれ以外を見分けるポイントは、


・急激な変化が直後24時間~48時間以内くらいに起きているか
・湿疹、腫れなどが主な症状か
このあたりでしょうか。


こういう場合は皮膚科に行くべきですね。


医療は、特に臨床の現場では「異常を取り除く」ことを主な目的としているので、原因を特定してもらえることは稀ですが、起きている異常はやっぱり専門家の判断によって適切な医薬品で抑えるのがベストです。どうしても原因を追究したい場合は、そういった種のことを得意として売りにしている皮膚科医に相談すると良いと思います。

3.かゆくなったり、しみたりするのは化粧品が原因?

洗顔後にかゆくなる、化粧品がしみるのは肌そのものの状態が悪いことが原因の方が多いです。


もちろん、その状態を放置すれば炎症が広がっていきますし、場合によっては常在菌が悪さをしたりして湿疹が出たりもします。そのときもやはり皮膚科へ行き、薬で症状を抑えた方がよいです。この段階で化粧品を一生懸命塗っても遅く、化粧品で治そうとしてはいけません。


ちょっとしみたりするくらいや、強いかゆみでなければ化粧品による保存的ケアで回復することもありますが、その場合、科学に基づいた考え方で作られている製品を選ぶ必要があります。自己判断で刺激の少なそうな化粧水だけ塗ったり、なんとなく皮膚や体によさそうなイメージの化粧品を使ってもよくはならず、悪化することもあります。


敏感肌、乾燥肌の本質は「生まれつき、もともと敏感、乾燥している」ではなく、加齢等により肌の力が弱くなってしまった結果(乾燥肌)、さまざまな刺激に耐えられなくなっている(敏感肌)という状態です。


一部、ハイドロキノンなど美容成分のくせに成分そのものが肌を炎症させる副作用を持っているものもないことはないですが、一般的に流通している化粧品にそういうリスクの高い成分はあまり入っていないし、入っていたとしても低濃度のため、そんな困ったことはあまり起きないです。

ハイドロキノンの化粧品における配合上限は3%ですが、実際には1%以下の含有量のものが多く、それ以前に有色メラニンを還元するという強力な美白剤であるハイドロキノン自体、大きなメーカーは採用していません。


美白剤や抗老化剤には一部そういう成分がありますが、保湿成分にはリスクの高い成分は存在しないですし、防腐剤や製品安定剤などは非常に濃度が低いため、それらの成分がピンポイントで肌への刺激となることも考え難いです。

4.まとめ

化粧品は一般的には良くも悪くも、作用が穏やかなものです。


健康な肌のポテンシャルを破壊するほどの刺激を与える可能性のある化粧品はそんなにないですし、逆に湿疹や腫れを治せるような化粧品もないです。


肌荒れと化粧品の因果関係はそれほど単純ではなく、肌が衰え弱くなっているところにケアが追い付かず、ダメージが上回ることで最終的に目に見える異変が起きる、というのがもっとも現実的に起こり得ること。


それは、日照り続きで土が乾いていき、最終的に作物がしなびるようなイメージが似ているかも。


そうなったら医薬品にバトンタッチです。


化粧品にできるのは、健康な肌が健康な状態を維持する予防的ケアまで。または、医薬品で回復したのち、再発を予防することです。


そう思ってもらった方が、娯楽品でもある化粧品選びを素直に楽しめるのではないでしょうか。


***


次回こそ、実際のハンドクリームを取り上げてそのつくりがどういうものか紹介していきたいと思っています。


今のところ、ネットで大人気のユースキンA(医薬部外品)、ナチュラル系の代名詞パックス、などを紹介したいと思っていますが、もし取り上げて欲しい製品があればコメントとかでリクエストどうぞ。


実店舗弊店オンラインショップ(会員制)のお客様はメールなどでもリクエストください。


今週末3月15日まで承ります。


地味なコロナフェスティバルを開催したいと思います。(やけくそ)
コロナよ……
はよ落ち着いてくれ……

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