「暖かくなってきたのに、なぜか肌の調子が悪い」
「いつもの化粧水が、急にしみるようになった」
毎年3月から5月にかけて、サロンでもこのようなご相談が急増します。実はこれ、気のせいではありません。
最新の皮膚科学研究において、日本の春は、気象・汚染物質・精神的ストレスが重なり合う「複合的皮膚環境」にあると定義されています 。いわば、肌にとっての「複合災害」が起きているのです。
今回は、2025年の最新データと科学的根拠に基づき、年齢を問わず知っておくべき「春のスキンケアの正解」を紐解きます。
目次
1. 3月の紫外線は「冬の2倍」の衝撃
まだ肌寒い日もある3月。「日焼け止めはまだ早い」と思っていませんか?
2025年の解析データによると、UVインデックス(紫外線の強さ)は3月から急激な上昇カーブを描き始めます 。

気象庁 日最大UVインデックス(解析値)より
警戒すべきは「UV-A波」
春先に特に怖いのは、肌の奥(真皮)まで届く「UV-A波」です。これは雲や窓ガラスを通り抜け、シワやたるみの原因となる「光老化」を引き起こします 。
さらに問題なのは、冬の乾燥でバリア機能が低下した肌に、この紫外線が降り注ぐこと。「乾燥ダメージ」×「紫外線」の負の相乗効果により、普段より炎症やシミのリスクが格段に高まってしまうのです 。
【対策】
外出の有無に関わらず、朝のスキンケアの最後には必ずUVケアを。「多機能UV(トーンアップやバリア機能付き)」で、肌に一枚の「盾」を作ってください 。
2. 黄砂は「見えないスクラブ」
春の風に乗ってやってくるのは花粉だけではありません。大陸から飛来する「黄砂」や「PM2.5」も、肌荒れの大きな原因です。これらは「ポリリューション(汚染)ダメージ」と呼ばれ、肌のバリア機能を物理的・化学的に攻撃します 。
絶対に「こすってはいけない」理由
特に黄砂の粒子は鋭利な形状をしています。肌に付着した状態で手でこすったり、ゴシゴシ洗顔をしたりすると、まるで「微細なヤスリ(スクラブ)」で肌を削るような物理的ダメージを与えてしまいます 。
春の肌がかゆい時、無意識にかいてしまうのが一番危険なのはこのためです。
【対策】
肌を直接外気に触れさせない「擬似皮膚」を作ることが重要です 。日焼け止めや化粧下地を塗ることで、汚染物質が直接肌に触れるのを防ぎましょう。
【Column:プロの視点】
「処方薬なら安心」は間違い? 春のゆらぎ肌に「ヘパリン類似物質」が合わない理由
乾燥対策として、皮膚科で処方される「ヘパリン類似物質(ヒルドイド等)」をスキンケア代わりに使っていませんか?
実は2024年10月から、美容目的での処方には「選定療養費」として追加の自己負担が発生するようになりました 。これは国が「美容目的の使用は不適切」と判断した結果ですが、サロン経営者としての経験からも、安易な使用には「待った」をかけたい理由があります。
1. 「血行促進」が逆に「かゆみ」を呼ぶ?
ヘパリン類似物質の大きな特徴は、血行を良くして代謝を促す「血行促進作用」です 。これはしもやけやアザの治療には有効ですが、春先の「ゆらぎ肌」には強すぎることがあります。
バリア機能が低下して炎症に近い状態の肌に、さらに血行を促すスイッチを入れると、皮膚温度が上がり、かえって「赤み」や「かゆみ」を増幅させてしまうリスクがあるのです 。
2. 「治療(工事)」と「保護(補修)」の違い
私のサロンでも、「処方薬を使っているのに乾燥が治らない」というお客様が、セラミド配合の化粧品に変えた途端に肌が安定するケースを数多く見てきました。これは「役割」の違いによるものです。
- ヘパリン類似物質(医薬品): マイナスの状態をゼロに戻すための「治療薬」。有効成分を奥まで届けるために浸透性が高く設計されており、健康な肌に漫然と使い続けることは、肌本来の恒常性を乱す刺激になり得ます 。
- セラミド(化粧品): 肌表面の隙間を埋めて、外部刺激をブロックする「保護膜」。無理に活性化させるのではなく、足りないセメントを補って壁を強くする「守りのケア」です 。
【結論】
「粉を吹くほどの病的な乾燥」や医師の診断がある場合は、迷わず医薬品を使用してください。
しかし、「なんとなく乾燥する」「より美肌になりたい」という目的であれば、無理に代謝を上げる医薬品よりも、肌のバリア機能を静かに補強してくれる「ヒト型セラミド」などの高機能化粧品を選ぶこと。
これが、春の敏感な肌を最短で落ち着かせる「正解」です。
3. 心のストレスは肌に出る(脳肌相関)
3月・4月は、卒業や入学、異動など生活環境が激変する時期。
最新の調査では、新生活にストレスを感じている人の76%が肌トラブルを経験しているというデータがあります(ストレスを感じていない人は24%)。
脳と肌は繋がっています(脳肌相関)。ストレスによるホルモンバランスの乱れが、バリア機能の低下に直結するのです 。
【対策】
スキンケアの時間を「メンタルケア」に変えましょう。自分の肌を慈しむように触れる「セルフタッチ」は、オキシトシンを分泌させ、ストレスを緩和することが科学的に実証されています 。
結論:全世代共通・今すぐ変えるべき「3つの行動」

春の肌トラブルは、環境と心からのSOSサインです。まずは以下の3つの「基本の守り」を徹底してください。
- 摩擦係数の最小化(洗い方の見直し):
花粉を落とそうと「こすりすぎ」ていませんか? たっぷりの泡で洗うこと。特にナイロンタオルの使用はNGです 。 - バリア機能の「物理的」補強:
コラムでも触れた通り、安易に薬に頼るのではなく、「セラミド」などで角層の水分保持機能を高め、乾かない肌の土台を作りましょう 。 - 意識の変革(肌管理へのシフト):
トラブルが起きてから治す「対症療法」ではなく、常に良い状態を保つ「スキンマネジメント(肌管理)」の視点を持ちましょう 。
(次回予告:年代別の「10代のニキビ」「大人のゆらぎ肌」「シニアの乾燥」対策については、次回の記事で詳しく解説します)







