美しい肌を守る日焼け止めの選び方④ ~よくある疑問をQ&A方式で~

最後は日焼け止めに関してよくあるご質問をQ&A方式でご紹介します。


Q.日焼け止めと化粧下地の違いは?


A.成分的に明確な違いはありません。

化粧下地は紫外線を防止する成分に肌色や凹凸を補正する成分を含んでいることが多く、体には使いにくいことが多いようです。ノンケミカル・SPF、PA値が条件を満たしていれば後はお好みでよいかと思います。


Q.パウダー状の日焼け止めってどうなの?


A.首や胸元、手の甲などの日常的な紫外線対策にうってつけです

パウダー状の日焼け止めは、そのまんま紫外線散乱剤です。クリーム状の日焼け止めに比べて塗りやすく、べたつかないため首や胸元、手の甲などの日常的な紫外線対策に適しています。ただ、服の襟にこすれたりすると簡単に落ちてしまうので、長時間屋外にいるときはクリーム状の日焼け止めと重ねた方が紫外線防止効果が確かです。


Q.美容成分入り日焼け止めの方がいいのでしょうか?


A.紫外線防止以外の、保湿、美白などの美容効果はあまり期待できないかと思います


日焼け止めに保湿成分や美白成分が含まれていることがありますが、ごく微量のことがほとんどです。美容効果は美容液やクリームに求めた方がよいと思います。美容成分30%以上配合などと高配合が謳われていることもありますが、日焼け止めには撥水剤として採用されやすいシリコーン油だったりすることも多いようです。「美容成分」の定義がけっこう曖昧なので難しい部分です。


Q.子ども用、敏感肌用なら肌に優しい?


A.一概にそうとも言えません


先の美容効果とも関連しますが、子ども用、敏感肌用という定義も実は曖昧です。何をもって子ども用、敏感肌用と銘打つかはメーカーさんの自由です。刺激をなるべく避けるという意味では、日焼け止めに限っては「紫外線吸収剤」に着目するのが良いと思います。


Q.屋内にいるとき、曇天のときは日焼け止めは不要?


A.UV-Aは雲やガラスを透過するため、美容の観点からはお顔の紫外線対策は必要です


UV-Aは肌表面に急激な変化を起こしませんが、真皮にまで到達するためしわやたるみ、しみの発生に深く関わっていると考えられています。美容面から考えるならば室内や曇天の場合でも紫外線対策が必要です。


Q.日傘、帽子を使えば顔に日焼け止めを塗らなくてもいい?


A.地表に降り注ぐ紫外線の6割ほどは散乱光によるものと考えられているため、日傘や帽子では十分な紫外線対策とはいえません


日傘や帽子は上から降り注ぐ(直射光)紫外線には有効ですが、地上に達する紫外線は散乱光によるものの方が量が多いので、十分な対策とはいえません。


【合わせてどうぞ】
美しい肌を守る日焼け止めの選び方①~成分に着目する~
美しい肌を守る日焼け止めの選び方②~使いやすさに篭絡されない~
美しい肌を守る日焼け止めの選び方③~SPF値とPA値の意味を知る~

美しい肌を守る日焼け止めの選び方③~SPF値とPA値の意味を知る~

SPF値とPA値から選び、シーンによって使い分ける

まずはSPF値とPA値について整理しましょう。

SPF値
紫外線B波によって、肌がサンバーン(赤みを持ってヒリヒリするやけどのような状態)を起こすまでの時間をどれだけ延長できるか示す数値。何も紫外線対策をしない状態だと、平均20分程でサンバーンを起こすと考えられているので、SPF1=約20分間サンバーンを起こす時間を伸ばせると考えられる。国際規格のため、輸入化粧品にも表記が見られる

PA値
紫外線A波によって、肌がサンタン(黒くなる)を起こすのをどれだけ伸ばせるかを示す、ざっくりした指標。サンタンの判定が難しいため、+、++、+++、++++の4段階で表示。伸びる目安は+で2~4倍、++で4~8倍、+++で8~16倍、++++で16倍以上。日本独自の指標のため国産化粧品か、海外メーカーの日本版でないと表記がない

注)++++表示は2013年から可能になりました

つまり、SPF20 PA++ならば、6.66時間紫外線B波によるサンバーンを起こすまで猶予をつくり、紫外線A波によるサンタンが起きるまで4~8倍延長するよ。


SPF40 PA+++ ならば、13.33時間紫外線B波によるサンバーンを起こすまで猶予をつくり、外線A波によるサンタンが起きるまで8~16倍延長するよ。


理論的には、こんな意味ということになります。
※厳密に言うと少し違うのですが、分かりやすくするとこんな感じ

日常使いならSPF20~40 PA++
屋外活動や海、山などでのレジャーならSPF40~50 PA+++

SPF値とPA値が高いものは紫外線吸収剤が採用されているケースが多いため、大は小を兼ねるとばかりに数値の高いものをつかっていると肌へ不要な負担をかけることになることがあります。


最近では紫外線吸収剤不使用のものでもSPF40-50,PA+++のものも出てきていますが、まだまだ稀です。

2021年6月追記:
この記事を書いた2015年当時はそうだったのですが、あれから6年の時を経て事情が変わってきました。2021年現在ではノンケミカルタイプ(紫外線吸収剤不使用)でもSPF50+,PA++++(フォープラスと読みます)のものがバンバン出ています。しかも、2017年頃までは、ごく一部のお高い日焼け止めしかできていなかったのに、今やお手頃価格のノンケミカルでもそれが出ています。化粧品の世界は日進月歩……まさにそれを目の当たりにしました。


たまのレジャーや旅行の際に使う分には、紫外線吸収剤を含む日焼け止めでも良いと思いますが、ケミカルタイプは肌のうえで化学変化を起こし、紫外線を発散させる形で日焼けを防止するため、思っている以上に厚く塗らなければ表記のSPF値が発揮されません。

また、ノンケミカルタイプは酸化鉄や亜鉛などの色粉で鏡のようにして紫外線を反射させるため、高SPF値であっても必ず十分な量と種類の撥水剤が入っていなければいけません。

使い分けが大事です。





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美しい肌を守る日焼け止めの選び方② ~使いやすさに誘惑されない~


シート、スプレーは避けてクリームや乳液タイプを選ぼう


日焼け止めには、サッと塗れるシート形状のものや、スプレーで吹き付けるタイプのものもあります。

いずれも手を汚さずに手軽に使えるため魅力的なのですが、残念ながらシートやスプレーでは十分な紫外線防止効果が得られない可能性が高いです。


SPF値(次回詳しく解説します)とは、紫外線B波の影響をどれだけ抑えることができるかという国際的な指標ですが、このSPF値のテストは1平方センチメートルあたり、2mgの化粧品を使用して行うという決まりがあります。


この量は、女性が日常的に使用している日焼け止め剤の量の約4倍~5倍ほどと考えられています。


つまり、かなりの厚塗りをして、はじめて表記のSPF値の効果が得られるというわけです。


シートやスプレー状の日焼け止めは、当然薄く淡くしか肌のうえに乗りませんし、均一に塗り広げることも難しいでしょう。また、ジェルのような軽いテクスチャーのものも十分な量を肌に乗せるのは難しいです。


確実な紫外線防止効果を得たいならば、日焼け止めの形状はやや重めの質感のクリームを選び、お顔全体に塗り広げたあと、特に紫外線の当たりやすい頬骨周辺と鼻のうえは必ず重ね塗りします。平均的なサイズのお顔ならパール粒2つ分くらいの量を1回で使うのが理想。

やや重めの質感は皮膜感や油様感が多いので心地よいものではないですが、その方が肌にしっかりした量を乗せられるため、十分な紫外線防止効果も望めます。

絶対に焼きたくないのなら(昔どっかで聞いたコピーですね…)、クリーム・たっぷり がキーワードです。


オマケですが、紫外線散乱剤は「粉」なので、スプレーやシートタイプ、ジェル状日焼け止めに主のサンスクリーン成分として使われていることはありません。これらの形状の日焼け止めは紫外線吸収剤を含むケミカルタイプのため、肌負担も大きくなります。

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紫外線を防止する成分は大まかに分けると2種類あります。


それが、「紫外線吸収剤」と「紫外線散乱剤」です。


<紫外線吸収剤の成分例>
オキシベンゾン(UV-A,UV-B両方に対応)
PABA(UV-B)
4-メトキシケイ皮酸-2エトキシエチル(UV-B)
t-ブチルメトキシジベンゾイルメタン(UV-A)
<紫外線散乱剤の例>
酸化チタン
酸化亜鉛


紫外線吸収剤は肌の上で化学変化を起こすことによって紫外線を防止します。


一方、紫外線散乱剤はファンデーションやルースパウダーの原料となる色粉ですが、微細な粉そのものが紫外線を反射することによって紫外線を防止します。そのため、紫外線吸収剤に比べると肌への負担が大きくありません。


紫外線吸収剤はその性質から多くの成分が配合上限が3%~20%程度に設定されています。


日常的な紫外線防止対策としては、紫外線散乱剤の方が肌に低負担のため、スキンケアの観点からはノンケミカルタイプ(紫外線吸収剤不使用)の日焼け止めがお勧めです。


ただし、ノンケミカルタイプ(紫外線吸収剤不使用)の日焼け止めのデメリット
肌への負担が少ないノンケミカルタイプですが、弱点があります。


それは、水、汗、物理的刺激に弱いことです。


紫外線散乱剤は「粉」なので、そのままでは水や汗に流れてしまいやすく、手で触ったり衣服に触れるとすぐに落ちてしまいます。


そのため、体に使う場合はシリコンなどの撥水剤を同時に含む「ウォータープルーフ」タイプを使うことが大切です。


お顔に使う場合は必ずファンデーションかフェイスパウダーを重ね、折を見てファンデーションやパウダーを塗り直します。

美しい肌の要素

スキンケア
美しい肌の定義ってなに?
美しい肌とは大まかに以下の3点が揃っている状態のことを言います。
1.十分にうるおってふっくらしていること
2.しみ、ソバカス、色素沈着などがなく、肌の色が均一であること
3.しわ、たるみがないこと
スキンケアは上記3点を維持するために行います。
それぞれを維持するためのスキンケアに必要な成分は、
1.保水成分(肌の水分量を増やすための成分)と油分(水分蒸発を防ぐための成分)
2.美白成分(シミ、ソバカスの生成を抑える成分)
3.細胞賦活、抗酸化、抗糖化などのアンチエイジング成分(美白成分と兼ねる場合もある)
基礎化粧品は、肌の状態と目指す方向性に合わせて全体的にどんな成分を含む製品を使うのか考えると効果的です。