石けんとボディソープについて

普段、シャワーやお風呂のときに何でからだを洗っているでしょうか。


私は愛用のボディソープがあります。


先日、化粧品をメーカーに発注する際に合わせて頼もうと思ったのに、忘れました。


カスッカスッと無惨な音を鳴らし、空を切るポンプ。申し訳ていどにしか出ないボディソープ……


そんなの、もう1回発注すれば良いですよね。


そうなんですけれど……


送料ががっつり上がって高いんですよ。


商品や消耗品と合わせてまとめて発注しないと、ボディソープだけでは送料の方が高くなるというね。


まあ、昨今の運送業界の事情をふまえると、仕方ないというか、これまでがおかしかったんですよね。


働いている方々が犠牲になっていての、あの価格だったわけだから。


だから思ったんです。


この機会にもう少し手に入れやすいボディソープを探せばいいじゃないかって。


久しぶり、というか、市販のボディウォッシュをちゃんと見たのははじめてかもしれないのですが、目を皿にしていつものケンコーコムさんやamazonのレビューを見て慄きました。


石けんの安全神話。


絶対的地位。


シャンプーではすっかり廃れた(と思う)その神話が、ボディ用洗浄剤の世界ではまことしやかに囁かれていたのです。


石けん以外の界面活性剤に同情した、というのもありますが、石けんが安全で低刺激だと信じていると思わぬ肌トラブルを招くこともあるので、今日はこのあたりをまとめてみようと思います。

1.石けんとは何か

陰イオン界面活性剤の一種です。嫌われ者のラウレス硫酸Na、人気者のココイルグリシンNa,ラウリルメチルタウリンNa(アミノ酸系界面活性剤)などと同じグループです。


パルミチン酸、ステアリン酸などの高級脂肪酸、またはパーム油、オリーブ油などの油脂に強アルカリ剤を反応させてつくる人工の界面活性剤。たまに石けんのことを「天然の界面活性剤」と表現しているものを見かけますが、天然ではありません。


反応させるアルカリ剤の種類によって、固形、液体と形状を変えます。

2.早速本題 せっけんは「やさしい」のだろうか

化粧品における「やさしさ」を何と定義するかにもよりますが…


安全性という点では、やさしいと言ってもよいかもしれません。何しろ、石けんは古来より存在する界面活性剤です。


ただし、その他の界面活性剤の多くが石けんよりも安全ではないかというと、そんなこともありません。


ラウレス硫酸Na(現在は化粧品にはあまり使われていない)など、旧表示指定成分の界面活性剤もありますが、そもそも旧表示指定成分の界面活性剤が危険であるという根拠もありません。旧表示指定成分は「アレルギーの報告があったもの」です。また、同じ陰イオン系界面活性剤には、皮膚刺激が非常に温和で石けん同様に優れた生分解性をもつものもあります。


一方、洗浄力という観点では、石けんは全くやさしくはありません。


アルカリ性という性質で、非常に高い洗浄力を持つからです。


固形せっけんには釜だき製法と中和法という製法がありますが、その過程で天然のうるおい成分がほどよく残る釜だき製法に比べ、大量生産に多い中和法は、別に保湿剤を添加しなければ洗浄力が強すぎてつっぱり感が出てしまうことが知られています。


このように、石けんは安全性という点ではやさしいと言ってもよいですが、洗浄力という点ではけっこう注意が必要な界面活性剤です。

3.適切かそうでないかの方がはるかに重要

「洗う」という段階で使うアイテムに重要なのは、汚れを落とすのに適切な洗浄力であることです。


この汚れには、メイク、整髪料など別に取り入れたもののほかに、皮脂も含みます。皮脂は健やかな肌を守るために大事なものですが、そのままにしておくと酸化し、においの元になったり、常在菌の餌となり、常在菌が過剰に増えてさまざまなトラブルを招きます。


特に体に関しては、顔や頭皮に比べ、皮脂腺の少ない部位が大半です。(胸元などは案外多い)


また、メイクや整髪料などを重ねることもなく、せいぜい重ねるのは日焼け止め、ボディクリーム、ローション程度で油性汚れは多くありません。そのため、意外と洗浄力は弱めのものが向いている人が多数です。


石けん(この場合のせっけんは、シンプルに保湿剤などがほとんど添加されていないせっけん)が向いているのは、皮脂量の多い20代から50代半ばぐらいまでの男性ではないでしょうか。男性でも20歳以降は肌の水分量は確実に低下していますから、洗浄後、水気と汗が落ち着いたのあとに強いつっぱり感やかゆみ、かさかさした感じを受けるようなら、クリームなどでしっかり保湿をしましょう。

それでも収まらない場合は、洗うものの洗浄力を落とすか、塗るものの保湿力を上げるか、はたまたその両方が必要です。


口コミや多すぎる情報、メーカーの販売戦略に惑わされず、ご自身の肌の状態を見て、感じて、冷静に選ぶことが大事だと思います。


4.実際にボディソープや石けんを見てみよう

無添加せっけん 泡のボディソープ

無添加せっけん 泡のボディソープ 5L
無添加せっけん 泡のボディソープ 5L


amazonさんで「ボディウオッシュ→レビューの評価順」でTOP表示です。(2018年7月現在)


全成分表示は水、カリ石ケン素地 のみ。


カリ石ケン素地とは、ジェル状、液状のせっけんの素地です。


商品紹介によると「この製品の主原料である『パーム核油』の原産地はインドネシアです」とあるので、パーム核油を主とした油脂にアルカリ剤である水酸化Kを反応させてできたものと思われます。(固形や粉状の石けんの素地である石ケン素地はアルカリ剤に水酸化Naを使用する)


保湿剤は全く入っていません。


商品の特徴には「うるおい・保湿 無添加・無香料」とあります。


水でかなり薄まっているとしたら、案外とマイルドな洗いあがりなのかもしれません。

Dove ダヴ ボディウォッシュ プレミアム モイスチャーケア ポンプ 500g


Dove ダヴ ボディウォッシュ プレミアム モイスチャーケア ポンプ 500g


Dove ダヴ ボディウォッシュ プレミアム モイスチャーケア ポンプ 500g


全成分表示:
水、ラウリン酸、ミリスチン酸、水酸化K、ラウレス硫酸Na、グリセリン、パルミチン酸、ジステアリン酸グリコール、ステアリン酸、香料、PG、コカミドプロピルベタイン、ココイルグリシンK、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、グアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド、ヤシ脂肪酸K、BHT、EDTA-4Na、エチドロン酸、メチルイソチアゾリノン


有名どころですね。


石けんと界面活性剤のラウレス硫酸Na両方入っています。


ラウリン酸、ミリスチン酸、水酸化Kでカリ石ケン素地です。パルミチン酸、ステアリン酸の高級脂肪酸も見られますが、質感調整ではないでしょうか。製品の質感を美しく見せるジステアリン酸グリコールも入っています。


コカミドプロピルベタイン、ココイルグリシンKと他の界面活性剤も見られますが、香料の後の表示なので微量かと。洗浄助剤、起泡剤かと。保湿剤はグリセリン。


液そのものはパールのような光沢をおびた、とろりとした美しい白色なのだと思います。ただ、それは保湿力には関係ありません。


こういう風になってくると、洗浄力や保湿力は実際に使ってみないとイメージしにくいです。

X(製品名伏せます)


600ml 2千円弱


全成分:
水、オレフィン(C14−16)スルホン酸Na、コカミドDEA、スルホコハク酸ラウレス2Na、ラウリルベタイン、ココイルグルタミン酸TEA、グリチルリチン酸2K、褐藻エキス、フムスエキス、ベタイン、カミツレ花エキス、カワラヨモギ花エキス、チョウジエキス、カプリル酸グリセリル、乳酸、PCA−Na、BG、ソルビトール、セリン、グリシン、グルタミン酸、アラニン、リシン、アルギニ、◇トレオニン、プロリン、ペンチレングリコール、香料(オレンジ果皮油・グレープフルーツ果皮油・マンダリンオレンジ果皮油・ハッカ葉油を含む)、エチドロン酸、フェノキシエタノール、安息香酸Na、メチルパラベン、エチルパラベン



こちらが私がいつも使っていたボディウォッシュの中身です。


石けんは入っておらず、皮膚や眼に対して非常にやさしい洗浄剤であるオレフィン(C14−16)スルホン酸Naを主にした、界面活性剤系。オレフィン(C14−16)スルホン酸Naは生分解性にもすぐれています。

保湿剤にはアミノ酸などの他、植物エキス、海藻エキスが入っていました。(ほとんど吸収されないものの、相対的に洗浄力がマイルドになる)

600mlの大容量で税込でも2千円しないので、コストパフォーマンスもいい! 注文し忘れたのが心から悔やまれます。

5.まとめ

石けんが、他の界面活性剤に比べて成分的にやさしく、特に優れている、ということは言い難いです。


それぞれ、洗浄力、起泡力、コストなどの特徴があります。


価格を度外視すれば、石けんよりも優れている界面活性剤もあります。(何を以て優れている、と評するかは難しい問題ですけれど)


古来から存在する界面活性剤なのでそういう意味では信頼感はありますが、洗浄力はかなり高め。


皮脂量が少なく、メイクや整髪料などの油性汚れも少ないからだに利用する際は、自身の肌コンディションを見極めてからどうぞ。


<本日の所要時間3時間>


少しでも有用な記事をお届けしたい、とは思っているのですが、このタイプの記事を書くとあまりにも労力がかかりすぎて、疲弊し、さらにその仕上がりのクオリティの低さに絶望して嫌になり、たいていこのあとから更新が滞ります。


化粧品の世界は情報が多すぎるし、誇大広告もすごいのでなるべくシンプルに、事実に基づいて冷静な情報を発信したいという思いはあるのですが……一方で、ネットという大海でいち個人がこんなことしたってね……みたいなちょっと投げやりな気持ちもあります。


そのあたり、折り合いつけつつ、うまく続けていけたらいいんですけれどね。

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