先日、皮膚科学的保湿ケアについて理論と実践編についてまとめました。
今日は実際に角質細胞間脂質の配合されている市販の美容液を見ていきたいと思います。
流川製薬 ヒメノネムリ
美容液 ヒメネムリ【 毛穴 】ヒト型セラミド 原液配合 【夜用エイジングケア】男女兼用 パラベン不使用 C31 20ml 2,980円(2021年1月amazonでの価格)
ヒメノネムリの全成分
水, グリセリン, シクロメチコン, PEG -10ジメチコン, ペンチレングリコール, ジメチコン, (ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー, BG, ウンカリアトメントサエキス, セラミド1, セラミド2, セラミド3, セラミド5, セラミド6Ⅱ, ホホバ種子油, ヒアルロン酸Na, (ジメチコン/(PEG-10/1 5))クロスポリマー, ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル), ジメチルシリル化シリカ, テトラヘキシルデ カン酸アスコルビル, パルミチン酸レチノー ル, ポリグルタミン酸, パルミチン酸アスコルビルリン酸3Na, スーパーオキシドジスムターゼ, ジラウロイルグルタミン酸リシン Na, (アクリレーツ/アクリル酸アルキル (C10- 30))クロスポリマー, 硫酸Mg, マルトデキストリン, フェノキシエタノール, 水添レシチン, ダイズステロール, 香料
ヒメノネムリの成分について
若々しく輝きを放つ潤い
就寝前に利用し、翌朝すぐに肌触りが変化します
肌が弱い方にもおすすめの夜用エイジングケア
などの、魅惑のワードが並んでいるうえに三千円以下ということで、消費者の心理をくすぐるツボがしっかり押さえられています。
Amazon新着ランキング第一位もうなずける…!
その真価やいかに。
成分表示は、水, グリセリン, シクロメチコン, PEG -10ジメチコン, ペンチレングリコール, ジメチコン, (ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー、BG……と続いています。
定番のグリセリンを除くと、美容訴求成分として最初に出てくるのは、一応「ペンチレングリコール」で、それ以前は基材とシリコーン油です。
一応、と書いたのはペンチレングリコールというのは保湿剤であると同時に抗菌剤でもあるので。
防腐剤フリーの化粧品をつくる際や、防腐剤の含有量や種類を抑えたいときにも配合されるそうです。保湿効果のほどは非常に穏やかなタイプ。安価な化粧品や古典的な化粧品にもBGと同じように必ずといって良いほど使われます。
シリコーンオイルには肌表面を覆い、やわらかい質感をつくりだす、化粧品の成分を均一に混ぜる、分散させる、水をはじくなどさまざまな働きがありますが、肌そのものに良い変化を起こすような働きはもっていません。
シャンプーのあとに使うコンディショナーをイメージしてもらうと分かりやすいですが、塗るとしっとり柔らかな感じになりますが、角質層の水分量を増やしたりとかそういうことはなく、あくまでもそういう感触を作り出すものです。ただ、ネット状に皮膚を覆うので、皮膚を保護するようなはたらきはあります。
皮膚のうるおいを守る仕組みのなかでは、「皮脂膜」に近いかも。
そして、BG以後の成分表記にはそうそうたる面々が名を連ねております。
ウンカリアトメントサエキス
セラミド1
セラミド2
セラミド3
セラミド5
セラミド6Ⅱ
(中略)
ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル)
(中略)
テトラヘキシルデカン酸アスコルビル
パルミチン酸レチノー ル
(中略)
パルミチン酸アスコルビルリン酸3Na
セラミドは全種類、そして合成セラミドである ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル) そのうえ、非常の安定度の高いすぐれたVC誘導体である テトラヘキシルデカン酸アスコルビル に、抗老化成分として医薬部外品有効成分として認められているパルミチン酸レチノー ル(ビタミンA誘導体)に、同じく抗老化成分である ウンカリアトメントサエキス (通称AC-11)まで見られます。
マジかー!! 肌に必要な保湿成分と、取り入れたいもの(ビタミンC、A)が全部入っているーーーー!!!
そう簡単な話にならないのが、化粧品のおもしろいところです。
たぶん、しっとり柔らかな手ざわりはシリコーンオイルによるもの
恐らく、こちらの製品の大半はBGまでの表記の成分、特にシクロメチコン, PEG -10ジメチコンなどのシリコーンオイルの含有量が高いものと思われます。
なぜなら、各種セラミドはおろか、AC-11にレチノール、油溶性VC誘導体なんかをそれぞれ効能が実感できる程度の濃度を入れた製品など、こんなお値段では絶対に不可能だからです。
10年以上前から累計で5千点くらいの化粧品を見ていますが、ヒト型セラミドを高濃度に含む美容液は未だ製品化されたものを見つけていません。また、レチノールを高濃度配合の化粧品は単価が1万円前後のものが主流です。
先日、amazonで買えるビタミンC誘導体配合化粧水で取り上げた、トゥベール 薬用ホワイトニングローションαEX 120mlはL-アスコルビン酸リン酸エステルナトリウムという非常に新しく、珍しいVC誘導体を6%という高濃度で含む化粧水でしたが、そのお値段は4,250円。ヒト型セラミドはどうしたってVC誘導体よりはずっと高価な成分なので、そのあたりからも推察できます。
つまり、これらの魅力的な成分たちは入っちゃいるけど、申し訳ていどというのが実際のところだと思います。
うたい文句にある、「 就寝前に利用 し、翌朝すぐに肌触りが変化します 」という文言からもそう想像できます。シリコンオイルほど、塗ってすぐ手ざわりが良く感じられる成分ってないんです。
だからといって、こちらの製品が悪いとか詐欺だとかという話にならないのも、化粧品のおもしろいところです。
シリコーン油がたくさん入っていると、塗ったあと肌はもちもち、つやつやした感じになります。
それは決して角質層の水分量が改善されて乾燥肌から脱するとか、そういう本質的な話ではないんですけれど、確かに感触はよくなります。そして、化粧品の定義は「人の身体を美化し、魅力を増し人体に対する作用が緩和なもの」なので、それで全然OKです。
まとめ
流川製薬 ヒメネムリはすごい成分が入っているけれど、たぶん実際に入っている量はほんのちょろっとで、多くはシリコーンオイル。
根本的に乾燥肌を手当したいとか、しみやしわをケアしていきたいという目的には向いてないけれど、塗ってもちもち、しっとりした感触が楽しめる、気持ちの良い美容液。お休み前のスキンケアを楽しみたい人に向いた製品だと思われます。
なお、こちらの製品は成分を見た印象だけで好き勝手言っているので、実際のところは全然違う可能性もあります。
なにを信じ、どう判断するかはご自身の美容観に添ってどうぞ。