だいたい45歳前後になると、乾燥に加えてしみ、しわ、たるみと、お肌の気になることは複雑化してくるのが普通です。
その中でも深刻な悩みにもなりがちなのは「たるみ」。
これらはメイクでごまかすことが難しく、顔全体の印象にも強く影響を与えるため、気になりはじめるとけっこう辛いところですよね。
「年だから仕方ない」そう思いつつも、同年代のお友達と比べてみたり、化粧品のCMに出ている女性の年齢と比べてみたり……何とかできるのならしたいと思うのが人心というものでしょう。
しかも、できるなら美容形成のような大それたことでなく、手軽な化粧品で。
はたして、「たるみ」が化粧品で改善可能なのかどうか、歴19年のエステティシャンが美容成分の観点だけでなく現場感覚も織り交ぜて、現実的な「ほんとうのところ」を書きます
時間がない人、文章が苦手な人向けにざっくり結論
フェイスラインのたるみに関しては、化粧品だけでもできることがある
目の下のたるみの改善については化粧品では難しい、根本的なケアは形成外科での手術のみ
目の下のたるみを予防するための化粧品でのケアを35歳ごろから、遅くとも40歳にははじめて欲しい
たるみの原因
根本的には肌のいちばん下の組織の劣化です。
具体的には真皮のコラーゲンの質が低下し、コラーゲンを支えるエラスチンというものが脆くなることで肌を支える力が弱っていきます。
主な原因は紫外線ダメージと老化です。
近年は特に紫外線……特に、真皮まで透過して肌細胞を傷つけることが分かったA波の影響が大きいのでは、と考えられているようです。
ただ、一生涯に浴びる紫外線の8割ほどは10代までに浴びている、という風にも言われはじめているとおり、たるみが気になりはじめた40代・50代から紫外線対策をしてもたるみへのアプローチとしては遅いということになってしまいます。
シミの予防という観点では十分に意味はありますけれどね。
今の10代、20代は幼少期から紫外線対策の重要性が浸透して育っている世代なので、この方たちが40代50代になったころには、もしかすると今よりたるみやしわの悩みの質や量がマイルドになっているかもしれません。私は今からそれを楽しみにしています。
話戻しましょう。
今の40代50代は時代背景もあって、若い頃はろくに日焼け止めも塗らなかった世代です。
果たして今からケアできる方法はあるでしょうか。
たるみへのアプローチは5点で考える
たるみの原因で書いたとおり、根本的には肌の一番底の部分である真皮組織の劣化なのでもちろん、そこへのダイレクトなケアが効果的ということにはなります。
その他に、根本的ではないけれども見た目に影響を及ぼしている「たるみ」ケアには、表皮、皮下脂肪、筋肉、むくみに対してのアプローチが有効な場合があります。
順に書いていきます。
表皮のケア
肌が乾燥しているとハリやつやがなくなります。
冷蔵庫に入れてあるきゅうりやにんじん、大根を思い出して見てください。ビニル袋やラップに包まずにそのまま入れると水分が抜けて、しんなりしていきます。あの状態です。
軽いたるみや年齢の若い方のたるみは乾燥、うるおいケアをすることでお顔全体の見た目がぐっと良くなります。また、乾燥ケアはスキンケアのなかでも最も基本的かつ、小さな予算で可能な分野なのでたるみが気になった時は真っ先に行って欲しいケアです。
化粧品で行う保湿ケアについてはこちら↓
皮膚科学発想の保湿ケア〜実践編〜
肌の保湿の仕組みについてはこちら↓
皮膚科学発想の保湿ケア〜理論編〜
皮下脂肪のケア、むくみケア
ふっくらしている体型の方やむくみやすい体質の方は、皮下脂肪やむくみへのアプローチを行うことでスッキリします。主にフェイスラインのたるみや二重あごに効果を発揮し、見た目がシャープになります。
具体的には血行促進成分や、脂肪分解成分が入ったマッサージクリームをたっぷり使い、フェイスラインにそってマッサージします。
この時にポイントはマッサージクリームをケチらないことと、肌表面を強く押したり擦らないこと。
肌は物理的刺激にとても弱く、肌表面をこすると色素沈着といって茶色っぽく変色してしまいます。また強い力をかけると、たるみやしわの根本原因である弱った真皮組織をさらに傷めてしまい、深刻なたるみやしわを生んでしまうこともあります。
マッサージクリームをケチるとクッション性が足りず、肌の表面を擦ってしまったり、存外に強い力が肌に伝わってしまいます。ここは覚悟を決めてたっぷりの量で優しくマッサージしたいところです。
筋肉のケア
たるみケアというと、一般の方は真っ先にこちらをイメージされるのではないかと思います。
少し前にフェイスラインのマッサージ器がたいそう流行ったのも納得ですね。
ここまで読んでいただけた方ならすでにご想像のことと思いますが、あのマッサージは御法度です。
マッサージクリームやジェルなどのクッションなく、しかも肌表面に強い力をかけると、たるみやしわの根本原因である弱った真皮組織をさらに傷めます。真皮組織へのケアは2024年現在でもかなり難しく、形成外科以外でできるケアは全て予防的ケアです。
娯楽以外の目的でお顔へのマッサージはお勧めしません。
美しいお肌を保ちたいのならリフレッシュのためだけに、ごく稀に、に留めてください。
元々お顔はよく動くところなので、年齢を重ねても太ももの前の筋肉にように極端に衰えたりはしないと考えられています。つまり、お顔のたるみケアの中でも、筋肉へのアプローチは優先順位が低いところです。
ただ、ここ数年で塗るだけで筋肉にアプローチできるような種の化粧品成分も出てきています。
私もしばらくの試用を経て施術に活用したりしていますが、確かに即効性があってすごいんですよね。まだそれほど一般的な成分でなく、ちらっと調べたところ、まだ市販品にはほとんど使われていないようだったのでここでは割愛します。
たるみ対策のホームケアにおいては、筋肉へのアプローチは優先順位が低く、2024年現在では行う必要がないと考えていただいて良いかと思います。
悩ましい目の下のたるみは予防的ケアが重要
たるみの中でも最もお顔全体の印象に影響することからご相談も多い、「目の下のたるみ」。
これは残念ながら化粧品やエステできることは少なく、すでにあるたるみを根本的に解決するには形成外科での手術のみです。
目の下のたるみは以下のようにできています。
①もともと薄い下まぶたの皮膚が、加齢に伴ってさらに薄くなる
②眼球を守るための眼窩脂肪を皮膚が支えられなくなり、前に出てくる
③前にでた眼窩脂肪の周りが陰となり、深いしわやたるみに見える
このため、化粧品やエステ領域では下まぶたの皮膚が弾力を保てるよう予防的ケアが重要です。
具体的にはコラーゲンの産生促進をするような成分の使用、美容アプローチ(イオン導入など)を肌の劣化が進む30代半ば頃からはじめ、継続します。
また、近年では細胞を再生したり活性化するような種の美容成分も出てきています。それらの一部は研究データ上は真皮に到達するものもあるようです。
日々のスキンケアにそういった最新の美容成分を取り入れていっても良いでしょう。