FANCL ファンケル エンリッチプラスシリーズ<しわ改善 医薬部外品>

何気なく点いていたテレビから流れてきたCMにはっとして、手を止めました。

医薬部外品で、「しわ改善」効果表記

有効成分は、ナイアシンアミドだ、と……?

しわ改善効果を明記できる医薬部外品なんて、そうそうありません。

しかも有効成分はナイアシンアミド。

ナイアシンアミドは古くから化粧品や医薬部外品に使われている成分ですが、しわ改善効果で医薬部外品承認が通ったなんて、これまで聞いたことがありません。

これは、確認しなければ……!! 手に取らねば!!!

ということで、取り寄せました。

みなさん大好きメーカーさん、しかし、当ブログでは意外にもはじめて取り上げるFANCL(ファンケル)さんの話題の製品です。

ファンケル エンリッチプラス化粧液 しっとり

FANCL ファンケル エンリッチプラス化粧液 しっとり(医薬部外品)
30ml 1,870円(2022年Amazon,メーカー公式サイトで同価格)

エンリッチプラス化粧液の全成分

有効成分:
ナイアシンアミド

その他の成分:
精製水、濃グリセリン、BG、ジグリセリン、POE(26)グリセリル、ベタイン、ペンチレングリコール、加水分解コラーゲン液-4、コラーゲン・トリペプチド F、エクトイン、メマツヨイグサ抽出液、スイートピー花エキス、シソ葉エキス、DPG、植物性スクワラン、水添大豆リン脂質、グリセリンエチルヘキシルエーテル、キサンタンガム、ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル・オクチルドデシル)、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体、水酸化K、イソステアリン酸フィトステリル、天然ビタミンE


ファンケル エンリッチプラス乳液 しっとり

FANCL ファンケル エンリッチプラス乳液Ⅱ しっとり(医薬部外品)
30ml 1,870円(2022年Amazon,メーカー公式サイトで同価格)

エンリッチプラス乳液Ⅱの全成分

有効成分:
ナイアシンアミド

その他の成分:
精製水、濃グリセリン、BG、イソノナン酸イソトリデシル、ジグリセリン、トリエチルヘキサン酸グリセリル、植物性スクワラン、ペンチレングリコール、ジメチコン、ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル・オクチルドデシル)、ステアリン酸POEソルビタン、POE(26)グリセリル、トリ(カプリル・カプリン・ミリスチン・ステアリン酸)グリセリル、加水分解コラーゲン液-4、コラーゲン・トリペプチド F、エクトイン、メマツヨイグサ抽出液、スイートピー花エキス、シソ葉エキス、マカデミアナッツ油、パルミチン酸セチル、脂肪酸ジペンタエリスリチル-1、ベヘニルアルコール、ステアリン酸ソルビタン、キサンタンガム、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体、グリセリンエチルヘキシルエーテル、カルボキシビニルポリマー、水添大豆リン脂質、ローズマリーエキス、水酸化K、天然ビタミンE、d-δ-トコフェロール

これは化粧品革命か? ~本題の前に~(お急ぎの方は飛ばしてね❤)

本題に入る前に恐縮なんですが、まずちょっとこの興奮をしたためていいでしょうか。我慢できない!

テレビCMを見た直後……いや、実際には見ている最中からスマホに右手を伸ばし、左手はすでに財布へと伸びていました。そして件の商品をトップバナーで見つけるやいなや、カートにIN! 購入手続き完了まで1分というところでしょうか。

そのぐらい、長年化粧品にどっぷり浸かって生きているマニアックエステティシャンにとって、

しわ改善効果表記 医薬部外品有効成分ナイアシンアミド はパワーワードだったのです。

実際、製品が届いてパッケージを見ても、

「すげえ! ホントに書いてある!!」(当たり前…)

と、心臓がバクバクしました。

こんなことでこれほど興奮して、胸を高鳴らせることができるのですから、まったく幸せな人生です。好奇心全振り人生。なお実務能力は……

さ、そんなどうでもいい前振りはさておき、成分と試用に際し感じたこと、総合的なパフォーマンスの考察などを書いてみます。

しわ改善の効果はどこのしわに効くの?

まず、「しわ」は大まかに分けると3種類あります。

小じわ・ちりめん小じわ
主に目じりにできる、細かいしわのこと。主な原因は肌の乾燥によるもの。肌の水分量の低下が顕著になる中年以降、特にできやすい。しわのなかでは比較的ケアがしやすく改善しやすいが、そのままにしておくと後述する「老化じわ」に移行していく。

表情じわ
主に額や口の周りなど、表情をつくるときに動く場所にできるしわのこと。主な原因は表情を動かすことそのものだが、加齢によって乾燥がすすんでいたり、真皮のコラーゲンや近接組織の劣化が進んでいると老化じわと相まって濃く、深くなり目立つ。

老化じわ
濃く、深い表情を動かさなくても目立つしわのこと。小じわや表情じわが移行する。主な原因は、肌の土台である真皮の組織劣化によっておきる……つまり、加齢が主要因。加齢以外では、紫外線A波も真皮細胞を傷つける。

このように、一口に「しわ」といっても種類があり、それぞれケア方法も対応する成分も違います。

特に老化じわについては、真皮の問題であることからホームケアでは対処がほとんど難しく、エステ領域でもできることは限られており、主に美容形成領域でした。これまでは

マジか! ナイアシンアミドは真皮のコラーゲンを増やす?!

では、件の製品、ファンケル エンリッチプラスシリーズの有効成分ナイアシンアミドは何のしわに効くということで医薬部外品承認が通ったのでしょうか。

すごく新しい話なので、手持ちの資料では調べようがなかったのですが、『化粧品成分オンライン』にとっても詳しく書いてありました。ありがたい!

コラーゲン減少改善による抗シワ・抗老化作用に関しては、2018年(推定)にナイアシンアミドが医薬部外品シワ改善有効成分として承認されましたが、2019年5月時点では作用メカニズムに関しては表皮と真皮の両方にアプローチとだけ記載されており、詳細なメカニズムは非公開とされています(文献11:2018)

https://cosmetic-ingredients.org/barrier-repair/niacinamide/

よく見たら、孫引きっぽいんですけれども……。

表皮と真皮の両方にアプローチということはつまり、小じわ・ちりめん小じわだけでなく、これまで化粧品塗布によるケアはほぼ不可能と考えられてきた老化じわにも効くということ。

しかしながら、その詳細なメカニズムは 非 公 開

さらには有用性のデータも非公表。

まあ、なんて秘密主義なんでしょう❤ もったいぶるなぁ。

そもそも、ナイアシンアミドという成分は冒頭でちらっと触れたとおり、ずっと特別な成分ではありませんでした。分類はコンディショニング剤といって、肌をすこやかに保つというふんわりした美容訴求効果。近年では、角質細胞間脂質の合成促進(保湿作用)、メラノソームの輸送阻害(美白作用)なども分かってきているそうですが、どれも実験室レベルの高濃度の話。臨床――製品レベルでは、他の成分のサポート的位置づけでした。そう、同じくさまざまな美容作用を合わせ持つプラセランタみたいな立ち位置です。

長年化粧品とキャッキャッウフフしてきた、マニアックエステティシャンも当然そのような認識で、施術の現場で重用したこともないですし、一般流通品に比べてシビアに結果の求められる業務用製品でもナイアシンアミドが全面に押し出された製品を知りません。

それが、急に裏Bossみたいに出張ってきたものだから、驚きと困惑しかありません。

鬼滅にたとえていうなら、これまで数度しか登場していないモブが急に出てきて「おれは無惨を倒せる。今までその力を隠してきた」って言いだしたようなもんです。もしくは、同じくモブが「わたし自分でも気づいてなかったけど、実は日の呼吸の使い手だったわ。エヘ」みたいなかんじ。

実際、その困惑は『化粧品オンライン』にも見て取れます。

シワ改善有効成分として承認されているため、その作用は有していると考えられますが、現時点では情報が少なく、シワ改善のメカニズムおよび有用性のデータも公開されていないため、抗シワ作用については保留とし、新たな情報がわかり次第追補します。

https://cosmetic-ingredients.org/barrier-repair/niacinamide/

この状態を、私たち消費者はどのようにとらえ、どのように判断すればよいのでしょうか。

製品の総合的なパフォーマンスは正直言って微妙(各方面に全力でごめんなさい)

そんないろんな意味でざわついた商品だったので、実際の製品を手に取ってみたんですけれども。

しわ改善効果とナイアシンアミドのことは、まあそういう事情なのでひとまず横に置いておいて……大前提として、ちょっと、その……言いにくいですけど……年齢化粧品としては、保湿力が足らないんですよね。

意を決して言います。

老化じわを改善する以前に、このツーステップでは基礎的な保湿力が足りないと思う。しわ改善が全面に押し出されているので、ターゲットは少なくとも35歳以上くらいからかなと思うのですが、私がこれまで拝見してきたその年齢層の方の平均的な肌状況を鑑みると、保湿力が足りない。

ナイアシンアミドに気を取られていて――というか、関心のすべてを持っていかれてしまって、わたしも実際に肌につけるまで他の成分を一切見なかったという愚かなことをしたんですが。

独特のきしみ感のある皮膜感に、懐かしい一般品の雰囲気を感じながら表示を見てみたのですが、

化粧液の方には複数のコラーゲン、乳液にはコラーゲンに加え、ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル・オクチルドデシル)(合成セラミドと考えてもらっていいと思います)も表示が見られるんですが……足りない。

塗った直後はもちもちっとして、すごくうるおっているように感じると思うのですよ。乳液だけでなく、化粧液にもシリコーン油が入っているのでね。気持ちよくスキンケアできるし、手ざわりはよくなります。

だけど、正味のところの水分量を増やす成分がほとんど入っていないので、就寝前にぬって寝る前くらいまではもちもちしていても、朝になるとけっこうパサついているなんてことが起きると思う。

気持ちよく塗りひろげられて、もちもち、つるつるっとした手ざわりを作れるのって市販品のあり方としてはすごく正しいと思うんですが、機能性を謳っているというところを踏まえるとちょっともやッとするかんじはあります。

スキンケアを楽しむ、という点からは素晴らしい製品だと思います。

清潔感のある容器に価格にそぐわないていねいなパッケージングは、厳格な品質管理を思わせ、開封時にわくわくします。やはり、スキンケア効果を追求したブランドやレーベルにはない、スキンケアを楽しむための仕掛けがそこここにあります。

ただ、率直に貪欲に、しわ改善効果をはじめとした高いスキンケア効果を望むのなら、選択はこちらの製品でなくても良いようにマニアックエステティシャンは思います。

まとめ

ファンケルエンリッチプラスシリーズは、なんかすごく効きそうで、わくわくしながらスキンケアを楽しめる製品! 実際のしわ改善効果……特に真皮への作用については機序も有用性のデータも非公表・非公開のため、界隈をざわつかせています。

今後、追従するメーカーが増えてくれば、ナイアシンアミドのゆるぎない地位が確立するかもしれませんが、今のところはしわ改善効果については様子見でよさそう。

小じわに悩む人は、角質細胞間脂質やその類似成分を高濃度に含む美容液やクリームを使い、こってりしっかりした重めのテクスチャのクリームで油分も補います。

表情じわに悩む人は、基本の保湿ケアをおこないつつ、アルジルリン、シンエイク、ロイファシル(いずれも通称)あたりの美容成分を3%から5%くらい含む化粧品を使ってみましょう。お値段はいずれも高いよ!

また、この辺の抗老化剤に属する成分は濃度が高すぎると扱いが難しいので、気を付けてね。ネットでは簡単に手に入っちゃうけどね。

深い老化じわに悩む人は機序と安全性が確立されている、VCをおとなしく週2~3回ポレーションするか導入しましょう。導入の際はマイナスでね。美容機器を使うのなら、誘導体でなくアスコルビン酸でもかまいません。その方が濃度が高いものがお安く手に入るかも。でも最大20%ぐらいにしときましょう。VCも濃度が高いものは、肌にしみます。あっとつっぱります。しみたり、つっぱりするだけでそれ以上の悪さはしないけど……。

VCを真皮まで浸透させるとコラーゲンの産生に関与する酵素にはたらきかけ、真皮のコラーゲンを増やし、肌の土台からケアできます。

難しいことはよく分からないけど、きれいな肌で若々しくいたい人は、まずはやっぱり保湿ケアからはじめてくださいな。基本を確実に行うのはやっぱり大事。何事もそうですよね。

余談 FANCLというメーカーさんについて

すごい人気のあるメーカーさんだな、という印象です。それだけ使っている人も多いし、注目されているんですよね。

これを書いている人は職歴16年目のずっとフリーのエステティシャンで、化粧品のご相談も承っているのですが、この15年間で一貫してもっともお問合せと製品のご質問が多いです。

老舗ばかりの大手化粧品メーカーのなかでは珍しく、比較的新しい会社なんですよね。50年前のベンチャーと言っていいのかしら。

ファンケルさんといえば、”無添加”が代名詞。

ファンケルさんが創業された1970年代はまだパラベンやセタノールなどの旧表示指定成分の表示もありませんでした。当然、いろんな成分の規定濃度も定まっていなかったはず。そうなると、肌をきれいにするための化粧品を使っていても肌荒れしたり、アレルギーを起こしたりということが今よりずっと多かったでしょう。

なので、ファンケルさんは添加剤や防腐剤の”無添加”にこだわったのですよね。

それから約30年が経ち、化粧品の全成分表示が義務付けられたのは2001年のことです。

現在ではかつて防腐剤の主流だったパラベンもフェノキシエタノールにかわり、その他の添加剤も刺激が強いものは製品中における濃度が定められています。精製の技術も向上し、化粧品の成分が直接的な原因で肌荒れを起こすことは少なくなりました。(特定の成分にアレルギー反応を起こす人を除いて)

このように、現代では”無添加”は製品の組成上はさほど意義がなくなってきているかもしれません。

しかし、ファンケルさんが今も消費者の心を捉えて放さないのはそういう歴史があるからでしょうか。

ファンケルさんは清く正しい一般の方向けの化粧品をお作りなので、私のような輩はあまり縁がありません。エステの現場や効果を追求するシーンで使いたい化粧品とは世界観が違うのですよね。

直接的な接点はなくとも、いつでも存在はすごく大きく感じるし、化粧品業界に一石を投じた(今も投じた……ナイアシンアミド……)という点でも敬意を覚えるメーカーさんです。

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毎週土曜更新目標なのですが、これまたすっと気配を消し、2週間くらい経っちゃってました。

嘆いてました。

オミクロン株の猛威というよりは――日々明らかになっていく”処し方”の情報を追っていました。

自分を奮い立たせるために、表出するときは怒りに変えるようにしているのですが、実際のところは嘆いています。

ここ数日でようやく回復して、解脱しました。この2年間の苦悩から。

どんな社会だって、生きていくしかないんだ……グスン と思いつつも、この機に子どもに恵まれていなければ、世俗から離れ、間違いなく山に籠っていたなと思います。