ずいぶんおカタイ表題になってしまったのですが、久々の更新1発目はこれから行きたいと思います。
何を考えるにせよ、何の話をするにせよ、やはりまずは大きな枠を捉えておくことが重要だと思いますので。
2023年現在のスキンケア事情 ざっくり結論
時間がない人、文章読むのが苦手な人向けに結論を簡単に。
効果を重視したスキンケアの考え方と製品は第三世代へと移行中
油分でフタ(第一世代)
足りないものを補う(第ニ世代)
自分の細胞を賦活する(第三世代)→今ココ
娯楽性の高いスキンケアは下火
香りや感触を楽しむタイプのスキンケアアイテムは減り、実用性に重点を置いた製品が増えている。
価格と性能が比例しないのは変わらず。しかし、安くて効果の高い化粧品は存在しない
高い化粧品が必ずしもパフォーマンス(性能)に優れているわけではないが、安くてスキンケア効果の高い化粧品が存在しないのも変わらない事実。それは、美容成分には「原価」があるため。ここで言う、値段が安いの定義はおおむね千円台。
順に少し詳しく書いていきます。
最新スキンケアの考え方は「自分の細胞を活性化する」
かつて社会的地位が高い人や経済的に裕福だった人たちだけのものだった「スキンケア」が、庶民にまで広がったのは江戸時代だと考えられています。それから数百年を経て、近代スキンケアが広まったのは今から4,50年前。
肌に良い作用をもたらすことを目的に作られたスキンケア化粧品の考え方は、いったいどのように変わってきているのでしょうか。
第一世代 油分でフタをして水分を逃さない
肌の水分を油分でフタをすることによって守る、逃さないという考え方でつくられた化粧品が最初です。油分はオリーブ油やホホバ油などの植物性の他、動物性由来のスクワラン、酸化に強い鉱物油など様々なものが使われてきました。
ところが皮膚科学が発展するにつれて、油分は肌の保湿にあまり重要でないことが分かってきました。油分が肌の水分を守るために担っている役割は全体の2,3%ほど。多くは、自前の皮脂で十分であることが分かりました。
こうして、肌を健やかに美しく守るためのスキンケアは次の時代に突入します。
第二世代 足りないものを補う、有用なものを足す
肌の水分を守っているのは主に角質細胞間脂質。今やすっかり名前も機能もその重要性も定着した「セラミド」がスターです。角質細胞間脂質の他には天然保湿因子であるアミノ酸、尿素など。そして主に真皮で重要な役割を果たしているコラーゲン。このあたりはすべて保湿剤です。
そして、コロナ禍以前──2020年頃まではこのあたりが機能性の高い化粧品の主要成分でした。
足りないものや、肌にとって有用な成分を補う、足すという考え方が主流でした。この流れに重なるようにして次の流れが起こってきていました。
第三世代 自分の細胞を活性化する
足りないものや有効な成分を補うという考え方には、限界がありました。
例えば、コラーゲンは真皮で肌の土台を担っている大事な成分ですが、化粧品成分のコラーゲンは分子が大きく、真皮まで到達することはできません。また、人のコラーゲンと化粧品成分のコラーゲンはつくりが異なるため、同化することはありません。
そこで登場したのが、自分の細胞を活性化する「細胞賦活」という考え方です。
十年ほど前から美容商材の展示会や、一部の先鋭的な科学的化粧品を作っているメーカーではその種の製品が見られましたが、コロナ禍以前までは大変に高価な製品が多数でした。
美容成分の濃度が高くなるクリーム、美容液でだいたい1万円台後半から3万円台。なかには30gと標準的な容量のクリームで6万円、8万円というものもありました。
それがコロナを経た現在は、1万円未満……中には5千円台で濃度は高くないもののそういった成分を含み、なおかつパフォーマンス的にもある程度の満足を得られる製品が出てきています。
娯楽性の高い化粧品の流行は下火
コロナ禍以前……私の感覚的にはだいたい2018年頃から、スキンケア化粧品の動向は二極化の様相をていしていました。
実用性VS.娯楽性です。
突然ですが、この記事をお読みの皆さまは何を基準に化粧水や美容液を選んでいますか?
お値段? それとも、化粧品そのものの感触? 塗ったあとの肌の感触?
ベタツキがないかどうか? 匂いが好みかどうか?
多くの方が、今あげた要素を総合的に判断して結論を出しているのではないでしょうか。
女性の場合は物事の判断基準が「感情」の人が多いので、その過程や要素はうまく言語化はできないけれど「好き」か「嫌い」──それを、「合う」「合わない」と表現されるのかもしれません。
肌の傾向はそれぞれ異なりますが、肌のつくりや仕組みは皆一緒です。それを明らかにし、それを踏まえたアプローチを行うのが皮膚科学だと思います。科学に基づいたアプローチは当然成果をあげます。その考え方にない化粧品が「娯楽性の高い化粧品」です。
香りやテクスチャーの心地よさや品の良さなどに重きを置いているものがあれば、自然派、地域密着など独自の思想に基づいて作られた化粧品があります。
この辺りの化粧品は、コロナを経て一気に勢いがなくなったようです。
社会全体で経済状況が悪化したので消費者のニーズもより実用的に、実務的なものに変化した結果かもしれません。
高い化粧品が必ずしも良い訳ではない。ただし、安くていい化粧品も存在しない
スキンケア化粧品の値段とスキンケア効果は比例しません。お値段が高いからといって、必ずしもスキンケア効果が高いとは言えないのです。
ただし、値段が高い化粧品の中には実際にとんでもないスキンケア効果を発揮する製品もあります。
しかし、逆にお値段が安くていい化粧品も決して存在しません。
これも悲しいことに事実で昔から変わりません。
ここでいう「お値段が安い化粧品」の定義とは、千五百円以下の製品のことです。
フリーのエステティシャンとして、科学的視点で15年以上に渡って数千点の化粧品を見て、手にとってきましたが、少し前ならば千円以下、今のように物価高の状況では千五百円以下の化粧品は、化粧水であってもスキンケア効果を期待するのは厳しい、というのが私の結論です。
化粧品の美容成分には原価というものがあります。たとえば、セラミドの中でも主に保湿に関わっていると考えられているセラミドⅡは非常に高価な成分です。千円台の化粧品にも表示上は入っていることがありますが、実際に使ってみるとその存在を全く感じません。
濃度が薄すぎるのです。美容成分はそれなりの濃度がないと体感できるくらいの効果を発揮しません。
それなりの濃度とは、目的とする効果によって異なりますが、最低1%以上です。3%ほどだと大抵しっかり存在を感じますし、5%以上は逆にリスクの心配をする必要が増えてくるかと思います。
そのため、保湿を目的としてセラミドⅡを含む製品を探し、予算を加味して千五百円の美容液を購入するよりは、合成できるようになって安価になったヒアルロン酸を高濃度に含む同じ価格の美容液を使った方が総合的なスキンケア効果は高くなる……といったようなことが、現実ではよく起こります。
ここが化粧品選びを難しくするひとつの理由かと思います。
長年、たくさんの方のスキンケア化粧品選びのご相談にのってきましたが、誰もが皆さんおっしゃいます。
安くていいのを教えて欲しい、と。
私もできるのならそうして差し上げたいと思います。ただでさえ、先の見えない世の中です。
ただ、なかなかそうはいかない事情があるというのは事実です。
2023年現在のスキンケア事情まとめ
コロナ禍を経て、スキンケア化粧品の傾向は大きく変わっていこうとしています。
これからは、自分の細胞を賦活する「第三世代」のスキンケアアイテムに注目したいところです。
とはいえ、スキンケアは必ずしも美肌づくりのために行わなければならないものではありません。
朝、自分にスイッチを入れるために。
夜はリラックスのために。
忙しい現代人が気持ちの切り替えをする時間のおトモでもあります。
ご自身の美容観をもって、適切なアイテムを選んでくださいね。